巨額使途不明金の陰に自民党あり
全国の私立幼稚園が加盟する全日本私立幼稚園連合会で、4億円超の使途不明金が見つかったというニュースは記憶に新しいと思います。
簡単な経緯は次のようなものです。
全日本私立幼稚園連合会では2017年からの4年間で4億円超、その系列の全日本私立幼稚園PTA連合会でも4000万円余りの不正流用があることが昨年11月の内部監査で見つかっています。
これら二つの両団体で資金管理を担当し、昨年末に退職した事務局長は“香川敬前会長の指示で出入金していた”と話しており、前会長は使途不明金を隠すために通帳を偽造したことを認めて会長職を辞任しています。
前会長と事務局長の2人は、連合会から刑事告訴され、即日、警察に受理されています。
前会長は、私的流用はしていないと説明しているということですが、どういう訳か、自宅を担保に銀行から2億円を借り、うち1億5000万円を弁済に廻したということです。私的流用がないのであれば弁済する必要はないと思いますが、不可解なことです。
仮に1億5000万円を流用していたとしても、残りの2億5000万円超はどこへ消えてしまったのでしょうか。
これと同じように巨額の資金が使途不明になっている事件があります。
2019年7月の参院選広島選挙区の河井案里氏を巡る大規模買収事件で、自民党本部から河井氏に振り込まれた1億5000万円の行方です。
今月5日に東京地裁であった夫の河井克行氏の公判では、1億5000万円の使途について、克行氏は「すべて党勢拡大に使い切った。1円たりとも買収資金に使っていない」と述べているということですが、巨額の資金が短期間に使われてしまったというのは極めて不自然です。
参議院選挙では、安倍首相の秘書らが度々、宿泊しないにもかかわらず、いつもキャリーバッグを持参して広島に応援に入っていたことが明らかになっています。巨額の資金はバッグに入れて秘書が持ち帰ったのではないかという疑惑があります。
1億5000万円が振り込まれた背景と使途については徹底的に解明されなければならない
さて、冒頭の全日本私立幼稚園連合を巡る事件に戻りますが、巨額の資金が消えてしまったということだけが共通点ではありません。実は、この事件の背後にも自民党の陰がちらつきます。
全日本私立幼稚園連合会は1984年4月の設立で、現在、全国47都道府県に約8000園ある私立幼稚園が加盟していて、運営は各幼稚園から集める年間2億円ほどの会費や寄付金で賄われるということです。
主な事業は幼児教育の調査研究、教職員の資質向上活動や福利厚生、国際交流や災害対策に向け積み立てる基金に充てられるということですが、連合会の第一の目的は、幼稚園教育の振興と幼稚園経営の安定を図る政策推進、文科省からの補助金増額の活動、つまりは文教族へのロビー活動だということです。
特に自民党と深い関係にあることは周知の事実です。
PTA連合会の会長には5年前から河村建夫元官房長官が就いており、河村氏の前の会長は森喜朗元総理で、森氏は現在も最高顧問に就いています。
2000年4月、森喜朗氏の総理就任時には、就任のお祝いとして現金1000万円が当時の全日本私立幼稚園連合会の会長(故人)から、側近で文教族の有力議員を通して手渡されています。
そのほか、200万ずつ総額1000数百万円分が、連合会から森氏に渡り、文教族の議員に配られたという証言もあり、ロビー活動があったことがうかがわれます。これらは森総理関連の政治資金収支報告書への記載はないということです。
また、河村元官房長官は、当初、連合会からの寄付などは、一切なかったと言っていましたが、6年前に、連合会にパーティー券30万円分を買ってもらっていたということが判明し、事件発覚後の3月末に30万円を返金しています。
これらに呼応するかのように、2つのことが連合会の思惑通りに動いていきます。
2000年当時に就学年齢の引き下げが議論されていたのですが、小学校教育が早く始まれば幼稚園児減少に直結すると連合会は猛反対、森元総理も連合会と歩調を合わせ、やがて議論は立ち消えとなっています。
ちなみに、森元総理は連合会の2年後に設立されたPTA連の初代会長に就任しています。
さらに、連合会にとって一番の悲願である幼児教育無償化(園児1人当たり月額2万5700円までを国が支援する制度)が、一昨年10月からスタートしています。この制度は、連合会にとっては私立幼稚園に通う子どもの増加という実益に直結しますし、政権にとっても保護者の負担減で支持増につながるという、双方にメリットがあります。
幼稚園連合会の事件を巡っては、使途不明金が政界工作に使われたのではないかという疑惑に加え、刑事告訴から受理までの流れが驚くべき速さで進んだことにも注目が集まっています。
連合会サイドは当初、4億円の使途不明金の問題は、香川前会長に1億5000万円返済させ、そのほかの使途不明金は内部で“調整”して内々に済ませようとしていたようなのです。ところが、3月6日、NHKがこの件を抜いて報じてしまったことで、異例のスピード対応になったようです。
10日には連合会側が告訴状を作成して翌11日に提出、即日、受理されています。これは通常ではありえない速さです。その裏には、香川前会長が山口県で幼稚園を経営しながら、同時に県の公安委員に就いていたことが影響しています。
NHKが報じた直後に山口県の公安委員らの働きで、3月9日には警察庁が詳細な情報を把握できていたようです。その結果、検察ではなく、菅政権の意向を忖度してくれる警視庁に刑事告訴させる方針が早々に決定したとみられます。
ここで動いたとされるのが学術会議の問題でも有名になった警察庁出身の杉田和博官房副長官と伊藤詩織さん事件を握りつぶした「菅の懐刀」といわれている警察庁ナンバー2の中村格次長の悪名高いコンビだといいます。
連合会の使途不明金問題は、政治家まで及ばないようにしたいという菅官邸の意向が汲まれたようです。それを裏付けるように、4億円については使途不明であるにもかかわらず、告訴容疑に業務上横領が入っていることから、前会長と元事務局長にすべての責任を押しつけて終わらせるつもりのようです。
「森総理に就任祝い1千万円を…」 私立幼稚園連合会の「4億円消失」、元役員が証言
捜査の手が政治家に及ばないようにトカゲの尻尾きりで終わらせてきた事件は、これまで嫌というほど見せつけられてきました。特に安倍政権以降は、それが顕著です。
今、まさに国民が直面している問題だけでも、政府のお粗末なコロナ対応、感染が拡大中にもかかわらず一部の企業の利益と一部の政治家の利権のためにオリンピックを強行しようとしている政府の異常さ、゛汚染水″の海洋放出・・・・、これらからもわかるように、利権がらみの腐敗政治の歪みが誰の目からも明らかなように顕在化してきています。
もはや先進国とは言えない日本の統治機構を変革するには、腐敗臭漂う自民党政治を終わらせ、その傀儡となっている司法と捜査機関を根底から作り直す必要があります。そのためには、社会の木鐸としてのメディアが正常に機能することが必要不可欠です。


簡単な経緯は次のようなものです。
全日本私立幼稚園連合会では2017年からの4年間で4億円超、その系列の全日本私立幼稚園PTA連合会でも4000万円余りの不正流用があることが昨年11月の内部監査で見つかっています。
これら二つの両団体で資金管理を担当し、昨年末に退職した事務局長は“香川敬前会長の指示で出入金していた”と話しており、前会長は使途不明金を隠すために通帳を偽造したことを認めて会長職を辞任しています。
前会長と事務局長の2人は、連合会から刑事告訴され、即日、警察に受理されています。
前会長は、私的流用はしていないと説明しているということですが、どういう訳か、自宅を担保に銀行から2億円を借り、うち1億5000万円を弁済に廻したということです。私的流用がないのであれば弁済する必要はないと思いますが、不可解なことです。
仮に1億5000万円を流用していたとしても、残りの2億5000万円超はどこへ消えてしまったのでしょうか。
これと同じように巨額の資金が使途不明になっている事件があります。
2019年7月の参院選広島選挙区の河井案里氏を巡る大規模買収事件で、自民党本部から河井氏に振り込まれた1億5000万円の行方です。
今月5日に東京地裁であった夫の河井克行氏の公判では、1億5000万円の使途について、克行氏は「すべて党勢拡大に使い切った。1円たりとも買収資金に使っていない」と述べているということですが、巨額の資金が短期間に使われてしまったというのは極めて不自然です。
参議院選挙では、安倍首相の秘書らが度々、宿泊しないにもかかわらず、いつもキャリーバッグを持参して広島に応援に入っていたことが明らかになっています。巨額の資金はバッグに入れて秘書が持ち帰ったのではないかという疑惑があります。
1億5000万円が振り込まれた背景と使途については徹底的に解明されなければならない
さて、冒頭の全日本私立幼稚園連合を巡る事件に戻りますが、巨額の資金が消えてしまったということだけが共通点ではありません。実は、この事件の背後にも自民党の陰がちらつきます。
全日本私立幼稚園連合会は1984年4月の設立で、現在、全国47都道府県に約8000園ある私立幼稚園が加盟していて、運営は各幼稚園から集める年間2億円ほどの会費や寄付金で賄われるということです。
主な事業は幼児教育の調査研究、教職員の資質向上活動や福利厚生、国際交流や災害対策に向け積み立てる基金に充てられるということですが、連合会の第一の目的は、幼稚園教育の振興と幼稚園経営の安定を図る政策推進、文科省からの補助金増額の活動、つまりは文教族へのロビー活動だということです。
特に自民党と深い関係にあることは周知の事実です。
PTA連合会の会長には5年前から河村建夫元官房長官が就いており、河村氏の前の会長は森喜朗元総理で、森氏は現在も最高顧問に就いています。
2000年4月、森喜朗氏の総理就任時には、就任のお祝いとして現金1000万円が当時の全日本私立幼稚園連合会の会長(故人)から、側近で文教族の有力議員を通して手渡されています。
そのほか、200万ずつ総額1000数百万円分が、連合会から森氏に渡り、文教族の議員に配られたという証言もあり、ロビー活動があったことがうかがわれます。これらは森総理関連の政治資金収支報告書への記載はないということです。
また、河村元官房長官は、当初、連合会からの寄付などは、一切なかったと言っていましたが、6年前に、連合会にパーティー券30万円分を買ってもらっていたということが判明し、事件発覚後の3月末に30万円を返金しています。
これらに呼応するかのように、2つのことが連合会の思惑通りに動いていきます。
2000年当時に就学年齢の引き下げが議論されていたのですが、小学校教育が早く始まれば幼稚園児減少に直結すると連合会は猛反対、森元総理も連合会と歩調を合わせ、やがて議論は立ち消えとなっています。
ちなみに、森元総理は連合会の2年後に設立されたPTA連の初代会長に就任しています。
さらに、連合会にとって一番の悲願である幼児教育無償化(園児1人当たり月額2万5700円までを国が支援する制度)が、一昨年10月からスタートしています。この制度は、連合会にとっては私立幼稚園に通う子どもの増加という実益に直結しますし、政権にとっても保護者の負担減で支持増につながるという、双方にメリットがあります。
幼稚園連合会の事件を巡っては、使途不明金が政界工作に使われたのではないかという疑惑に加え、刑事告訴から受理までの流れが驚くべき速さで進んだことにも注目が集まっています。
連合会サイドは当初、4億円の使途不明金の問題は、香川前会長に1億5000万円返済させ、そのほかの使途不明金は内部で“調整”して内々に済ませようとしていたようなのです。ところが、3月6日、NHKがこの件を抜いて報じてしまったことで、異例のスピード対応になったようです。
10日には連合会側が告訴状を作成して翌11日に提出、即日、受理されています。これは通常ではありえない速さです。その裏には、香川前会長が山口県で幼稚園を経営しながら、同時に県の公安委員に就いていたことが影響しています。
NHKが報じた直後に山口県の公安委員らの働きで、3月9日には警察庁が詳細な情報を把握できていたようです。その結果、検察ではなく、菅政権の意向を忖度してくれる警視庁に刑事告訴させる方針が早々に決定したとみられます。
ここで動いたとされるのが学術会議の問題でも有名になった警察庁出身の杉田和博官房副長官と伊藤詩織さん事件を握りつぶした「菅の懐刀」といわれている警察庁ナンバー2の中村格次長の悪名高いコンビだといいます。
連合会の使途不明金問題は、政治家まで及ばないようにしたいという菅官邸の意向が汲まれたようです。それを裏付けるように、4億円については使途不明であるにもかかわらず、告訴容疑に業務上横領が入っていることから、前会長と元事務局長にすべての責任を押しつけて終わらせるつもりのようです。
「森総理に就任祝い1千万円を…」 私立幼稚園連合会の「4億円消失」、元役員が証言
捜査の手が政治家に及ばないようにトカゲの尻尾きりで終わらせてきた事件は、これまで嫌というほど見せつけられてきました。特に安倍政権以降は、それが顕著です。
今、まさに国民が直面している問題だけでも、政府のお粗末なコロナ対応、感染が拡大中にもかかわらず一部の企業の利益と一部の政治家の利権のためにオリンピックを強行しようとしている政府の異常さ、゛汚染水″の海洋放出・・・・、これらからもわかるように、利権がらみの腐敗政治の歪みが誰の目からも明らかなように顕在化してきています。
もはや先進国とは言えない日本の統治機構を変革するには、腐敗臭漂う自民党政治を終わらせ、その傀儡となっている司法と捜査機関を根底から作り直す必要があります。そのためには、社会の木鐸としてのメディアが正常に機能することが必要不可欠です。


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