重大事故の東京電力と軽微な被害で済んだ東北電力の違いは何?
東日本大震災から10年が経ちました。10年目の節目などと表現されますが、被災者にとっては節目の10年の前後で何かが変わったわけではありません。10年前にの3月11日を境にすべてが変わってしまったとしか言えないはずです。
大地震と大津波により街は壊滅的な被害を受け、多くの尊い命が失われました。風光明媚な海岸線は一変し、今は、そこに巨大な防潮堤が張り巡らされています。
東日本大震災では、過去に築かれていた防潮堤を大津波が破壊して、街やそこで暮らす人々をのみ込みました。
今回の経験を踏まえて、新たに造られた防潮堤の高さは、数十年から百数十年の間にその地域で予想される津波や高潮の高さを考慮して設計されています。
しかしながら、あまりにも高い防潮堤は、海が見えないために逃げ遅れてしまう可能性もありますし、高い防潮堤に安心して逃げることがおろそかになってしまうという指摘もあります。
景観を損なってまで高い防潮堤を造る必要性があったのか、土建屋だけが潤う仕組みになっているのではないかという疑問が残ります。
東日本大震災後の防潮堤の設計の考え方
それでも、東日本の沿岸地域では少しずつでも復興が進み、人々の新たな生活が営まれていますが、いまだに復興どころか汚染水が溜まり続け、状況が悪化しているところが東京電力福島第一原発です。
福島第一原発と同様に、東日本大震災の巨大地震と未曾有の津波に襲われながらも、非常電源の喪失もなく、関連施設のボヤ程度の軽微な被害にとどまったのが、東北電力女川原発です。東日本大震災の震源地に最も近い原発で、福島とほぼ同じ高さ13mの津波が襲来したにもかかわらず、福島第一原発とは大きな違いです。しかも、女川原発では、震災直後に施設内に避難者を収容することさえしています。
福島と女川の明暗を分けたもの、一体、何だったのでしょうか。
一言で言ってしまえば、企業体質の違いということになってしまうのかもしれませんが、その最大の違いは、原発の安全確保が如何に重要であるかを認識して、日頃から、これでもかというほどの十分な対策をとってきた東北電力と、政府に依存した甘い見通しで安全性を軽視し対策を怠ってきた東京電力の違いではないかと考えられます。
女川原発での対策を簡単に紹介します。
① 貞観津波クラスの巨大津波を想定し原発の敷地の高さを15mにした基本設計
② 想定や現状の見直しとそれに応じた対策を積み重ねた何重ものバックアップ
万全を期していたのは電源の確保で、通常4系統である高圧線網を、女川原発は5系統を備えていた。
震災で4系統がダウンしたが、最後の1系統が正常に機能し続けた。非常用のディーゼル発電機は、2号機の一部で停止したものの他系統は正常で相互融通できる状態にあった。
③ 補強工事などの細部に亘る様々な対策と改善
詳しくは、下記のサイトをご覧ください。
原発事故・福島と女川の違い
福島と女川、企業文化の違いといってしまえばそれまでのことですが、東京電力の背後には、常に政府の影がちらつきます。
京都大学工学部原子核工学科出身の共産党の吉井英勝衆院議員(当時)は、2006年から地震や津波による電源喪失で冷却機能を失う危険性を再三にわたって指摘し、2006年12月13日には質問主意書を政府宛に提出しています。
ところが、この質問主意書に対して、同年12月22日、現状で十分との認識を示した答弁書が「内閣総理大臣 安倍晋三」名で出されています。
福島原発が重大な事故を起こした最大の原因は、バックアップ電源の喪失です。もし、このときに安倍首相(当時)がバックアップ電源の検証をして、東北電力のような十分な対策を講じていたなら原発事故は起きなかったかもしれません。
これは明らかに不作為の違法行為であり、安倍前首相の責任は極めて重大です。
さらに、吉井議員の質問主意書に対する安倍首相の答弁書の問題をインタビューで追及されると、恫喝めいた行動に出たのが、第一次安倍内閣でも経済産業大臣をつとめ、原子力行政に深くかかわっていた甘利明氏です。
犯罪行為を追及されると、恫喝まがいの行動でメディアを黙らせるというのは、安倍政権から菅政権に引き継がれている常套手段です。
原発事故判決では言及されなかった もう一つの重大な国の責任
政府が、なぜ安全を蔑ろにしてまで東京電力を擁護する必要があったのでしょうか。
以前、読んだキャリア官僚による告発ノベル「原発ホワイトアウト」には、総括原価方式によってもたらされる超過利益(レント)が、裏の集金・献金システムとして、日本の政治に組み込まれ、結果として、電力システム改革が骨抜きにされていく様子が、リアルに描かれていました。
政治家や官僚にとって、自分たちに大きな利益をもたらしてくれる東京電力は魅力的な存在であったに違いありません。
腐敗しきった安倍政権とそれを継承する菅政権の悪行の数々により、この国の政治が、原発と同じような仕組みで一部の企業や政治家だけが恩恵を受けるような仕組みに歪められていることは、多くの国民が知るところとなっています。
原発事故の根本的な原因を究明し、関係者の責任を明確にしない限り、同じような重大な事件・事故は繰り返されることになります。その前提として、三権癒着構造を解消し、司法の独立性を高めることは絶対不可欠です。


大地震と大津波により街は壊滅的な被害を受け、多くの尊い命が失われました。風光明媚な海岸線は一変し、今は、そこに巨大な防潮堤が張り巡らされています。
東日本大震災では、過去に築かれていた防潮堤を大津波が破壊して、街やそこで暮らす人々をのみ込みました。
今回の経験を踏まえて、新たに造られた防潮堤の高さは、数十年から百数十年の間にその地域で予想される津波や高潮の高さを考慮して設計されています。
しかしながら、あまりにも高い防潮堤は、海が見えないために逃げ遅れてしまう可能性もありますし、高い防潮堤に安心して逃げることがおろそかになってしまうという指摘もあります。
景観を損なってまで高い防潮堤を造る必要性があったのか、土建屋だけが潤う仕組みになっているのではないかという疑問が残ります。
東日本大震災後の防潮堤の設計の考え方
それでも、東日本の沿岸地域では少しずつでも復興が進み、人々の新たな生活が営まれていますが、いまだに復興どころか汚染水が溜まり続け、状況が悪化しているところが東京電力福島第一原発です。
福島第一原発と同様に、東日本大震災の巨大地震と未曾有の津波に襲われながらも、非常電源の喪失もなく、関連施設のボヤ程度の軽微な被害にとどまったのが、東北電力女川原発です。東日本大震災の震源地に最も近い原発で、福島とほぼ同じ高さ13mの津波が襲来したにもかかわらず、福島第一原発とは大きな違いです。しかも、女川原発では、震災直後に施設内に避難者を収容することさえしています。
福島と女川の明暗を分けたもの、一体、何だったのでしょうか。
一言で言ってしまえば、企業体質の違いということになってしまうのかもしれませんが、その最大の違いは、原発の安全確保が如何に重要であるかを認識して、日頃から、これでもかというほどの十分な対策をとってきた東北電力と、政府に依存した甘い見通しで安全性を軽視し対策を怠ってきた東京電力の違いではないかと考えられます。
女川原発での対策を簡単に紹介します。
① 貞観津波クラスの巨大津波を想定し原発の敷地の高さを15mにした基本設計
② 想定や現状の見直しとそれに応じた対策を積み重ねた何重ものバックアップ
万全を期していたのは電源の確保で、通常4系統である高圧線網を、女川原発は5系統を備えていた。
震災で4系統がダウンしたが、最後の1系統が正常に機能し続けた。非常用のディーゼル発電機は、2号機の一部で停止したものの他系統は正常で相互融通できる状態にあった。
③ 補強工事などの細部に亘る様々な対策と改善
詳しくは、下記のサイトをご覧ください。
原発事故・福島と女川の違い
福島と女川、企業文化の違いといってしまえばそれまでのことですが、東京電力の背後には、常に政府の影がちらつきます。
京都大学工学部原子核工学科出身の共産党の吉井英勝衆院議員(当時)は、2006年から地震や津波による電源喪失で冷却機能を失う危険性を再三にわたって指摘し、2006年12月13日には質問主意書を政府宛に提出しています。
ところが、この質問主意書に対して、同年12月22日、現状で十分との認識を示した答弁書が「内閣総理大臣 安倍晋三」名で出されています。
福島原発が重大な事故を起こした最大の原因は、バックアップ電源の喪失です。もし、このときに安倍首相(当時)がバックアップ電源の検証をして、東北電力のような十分な対策を講じていたなら原発事故は起きなかったかもしれません。
これは明らかに不作為の違法行為であり、安倍前首相の責任は極めて重大です。
さらに、吉井議員の質問主意書に対する安倍首相の答弁書の問題をインタビューで追及されると、恫喝めいた行動に出たのが、第一次安倍内閣でも経済産業大臣をつとめ、原子力行政に深くかかわっていた甘利明氏です。
犯罪行為を追及されると、恫喝まがいの行動でメディアを黙らせるというのは、安倍政権から菅政権に引き継がれている常套手段です。
原発事故判決では言及されなかった もう一つの重大な国の責任
政府が、なぜ安全を蔑ろにしてまで東京電力を擁護する必要があったのでしょうか。
以前、読んだキャリア官僚による告発ノベル「原発ホワイトアウト」には、総括原価方式によってもたらされる超過利益(レント)が、裏の集金・献金システムとして、日本の政治に組み込まれ、結果として、電力システム改革が骨抜きにされていく様子が、リアルに描かれていました。
政治家や官僚にとって、自分たちに大きな利益をもたらしてくれる東京電力は魅力的な存在であったに違いありません。
腐敗しきった安倍政権とそれを継承する菅政権の悪行の数々により、この国の政治が、原発と同じような仕組みで一部の企業や政治家だけが恩恵を受けるような仕組みに歪められていることは、多くの国民が知るところとなっています。
原発事故の根本的な原因を究明し、関係者の責任を明確にしない限り、同じような重大な事件・事故は繰り返されることになります。その前提として、三権癒着構造を解消し、司法の独立性を高めることは絶対不可欠です。


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