職権を濫用して不起訴処分にする検察への対抗手段
前回の記事にコメントをいただいたものですが、難しい表現ですので、わかりやすくまとめてみます。
小林節 慶応大名誉教授によれば、内乱罪(刑法77条)の保護法益は「憲法が定める統治機構の基本秩序」であるが、森友・加計問題などが明らかにした「権力の私物化」は憲法が定めた民主政治の破壊以外の何ものでもないということなので、そのことを前提に考えてみたいと思います。
小沢一郎氏の知恵袋が指摘 安倍政権による「内乱」予備罪
内乱罪での告発に対し、仮に検察が不起訴処分とした場合、権力の私物化については十分過ぎるほど証拠がそろっているわけですから、「嫌疑なし」「嫌疑不十分」はあり得ないはず。強いて不起訴処分にするなら、「起訴猶予」ぐらいしか考えられません。
ところが、「起訴猶予」の要件は、法務省の事件事務規定 第75条1項(平成30年4月27日法務省刑総訓第3号)、刑事訴訟法 第248条で規定されており、この要件も満たしていません。
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事件事務規定 第75条2項
不起訴裁定の主文は,次の各号に掲げる区分による。
(20) 起訴猶予
被疑事実が明白な場合において, 被疑者の性格,年齢及び境遇,犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないとき。
刑事訴訟法 第248条
犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。
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これだけでも、不起訴処分にすることが不適切な事件ですが、もっとも考慮すべき重要なことは、事件の特殊性です。
一つ目のポイントは、首相は特別職の国家公務員であると解釈される点です。
国会職員は、過去の一時期を除き特別職の国家公務員と位置付けられており、法律でも明記されています。 憲法上は、国会議員も「公務員」であるといっても間違いないということが、参議院法制局のHPからも知ることができます。
国会議員は公務員か
ところが、首相への忖度なのでしょうか。
このサイトに、次の一節が加えられています。
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ちなみに、国会議員を国家公務員と位置付けたとしても、特別職の国家公務員となるので、国家公務員法は適用されません。したがって、いずれの見解に立っても実務上の問題は生じません。
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法制執務コラムとして掲載されていますが、結局、何を言いたいのか、論旨不明な文章となっています。
それで、この一節は無視して、首相を国家公務員と解釈した場合、次の法律の規定を受けます。
国家公務員法 第38条
次の各号のいずれかに該当する者は、人事院規則の定める場合を除くほか、官職に就く能力を有しない。
二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者
内乱罪は禁固刑に該当する犯罪ですから、国家公務員法 第38条 が適用されることになります。
次に、検察が、内乱罪の告発を不起訴処分にしてしまうことが、果たして妥当であるのかどうか、憲法との兼ね合いで見てみます。
● 禁錮以上の刑に処せられるべき罪につき、公務員を被疑者とする告訴・告発は、憲法 第15条1項に掲げる「公務員」を「罷免」する「国民固有の権利」を行使する性質を有している。(憲法 第15条1項)(国家行政組織法 第12条3項)
● 憲法第3章で保障する国民の権利が問題となつている事件なので、常にこれを公開法廷で行われなければならない。(憲法 第82条)
● 行政機関である検察は、終審として裁判を行ふことができない。(憲法 第76条、第81条)
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憲法 第15条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
国家行政組織法 第12条3項
省令には、法律の委任がなければ、罰則を設け、又は義務を課し、若しくは国民の権利を制限する規定を設けることができない。
憲法 第82条 裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。
2 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。
憲法 第76条
すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
2 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。
憲法 第81条
最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
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要するに、検察による不起訴処分は、これらの法律に反しており、憲法で保障された国民の権利に制限を加えることになります。
ちなみに、告訴・告発された者が国家公務員という観点では、不正裁判にかかわった裁判官に対する刑事告訴、不正にかかわった官僚に対する告発等についても同様で、不当に不起訴処分にされていることが証明されます。
T_Ohtaguro 様によると、現在の政府の状態は、刑法 第77条1項に掲げる「領土において国権を排除して権力を行使し、」に該当し、罷免されるべき公務員により、違憲、不法に、国の機関を占拠している状態といえるということです。
したがって、検察が,安倍首相を不起訴処分にした場合、憲法 第68条2項の規定により、任意に国務大臣を罷免することができる内閣総理大臣に対し、上川陽子法務大臣の罷免を求めるか、憲法 第55条の規定により、衆議院に対し、上川陽子 議員の資格に関する争訟を裁判することを求めればよいということです。
告訴・告発を行っても、公訴を提起しない処分を濫用する法務大臣、検察官は、これ自体が内乱行為であり、 よって、内閣総理大臣、又は、法務大臣が属する議院に罷免を求めることで対処できるということです。
なるほど、職権を濫用する検察に頼らなくても、安倍首相を罷免する手段はあったのです。









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