違法行為をする官僚の心理
前回は、財務省の改ざん問題についての麻生大臣の言葉を引用しましたが、「改ざんは個人の資質」による問題として片付けようとしているところに違和感を感じるということを、 ジャーナリストの志村 昌彦 氏が社会心理学的な視点から述べており、たいへん興味深いので紹介します。
要約した部分と、わかりやすく書き換えた部分があります。
https://toyokeizai.net/articles/-/220058 より
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企業組織での犯罪にはふたつの種類がある。
職務犯罪:社員が会社のお金を横領するなど、社員が加害者で会社は被害者となる。
組織性犯罪:いわゆる組織ぐるみで不正を行い隠ぺいする。加害者は企業などの
組織で、被害者は社会や消費者といった外部になる。
職務犯罪が個人的な事情が原因になって起こるのに対して、組織性犯罪は個人の資質(性格)よりも、組織の風土や文化によって(組織に入ったことによって)引き起こされるという違いがある。
“集団の成員に共有されている価値判断や行動様式の規準”を、社会心理学では「集団規範」と呼ぶ。明文化された規則もあれば、明文化されていないが慣例として行われているものもある。
企業や官庁などは、日常の業務を遂行するにあたっては、上司の指示・命令に従って行う。業務命令に従うことは、就業規則として明文化されているのが一般的である。
さて指示された業務内容が法令に違反している、あるいは倫理に反していると思われる場合に、命令された側は指示どおりに業務を遂行してよいのだろうか。
これについては、社会心理学の有名な「ミルグラムの服従実験」が参考になる。
権威のある人から指示命令されると、受けた側は多少の葛藤があっても指示命令に従ってしまう傾向が優勢になる。
それでは、集団規範によって、組織の成員に共有されている価値観・行動様式の中で最優先されるものは何だろうか。
それは成員が所属する組織が存続することである。当然、そこには、組織による不正や隠ぺいが生じる陥穽があるのだ。
たとえば企業全体としては法令順守を掲げていても、その下部組織が、改ざんやその隠ぺいによって組織全体の目標を達成したことに偽装すれば、下部組織として生き残ることができる。
縦割りされタコツボ化した組織内では、社会心理学でいう「集団の凝集性(集団が構成員を引きつけ、その集団の一員であり続けるように動機づける度合い。)」が機能するため法令違反が起こりやすい。
集団規範は同調者に対する報酬の規準として機能する一方で、逸脱者に対する制裁機能も持つので、同調圧力に抗して疑問の声を上げることは困難であるからだ。
社会心理学では組織における意思決定や組織性犯罪の成り立ちについての数多くの研究がある。こうした知見を体系的にビジネス現場に取り入れなければ、組織による情報の改ざん隠ぺいを防ぐことは難しいだろう。
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内部告発や内部通報制度など、形ばかり整えても、社会心理学の研究成果を取り入れなければ、組織的な改革は無理だということでしょう。
もっとも、官邸に人事権を握られ、違法行為であっても政治家に従うだけの官僚組織や、個々の議員が言いたいことも言えない自民党組織など、組織の存続自体に何の価値も見出せないケースであれば、いっそのこと組織をぶち壊して基礎から作り直した方が手っ取り早く、勇気ある構成員が出現してくれる方が、ずっと国民のためでもあるのです。

要約した部分と、わかりやすく書き換えた部分があります。
https://toyokeizai.net/articles/-/220058 より
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企業組織での犯罪にはふたつの種類がある。
職務犯罪:社員が会社のお金を横領するなど、社員が加害者で会社は被害者となる。
組織性犯罪:いわゆる組織ぐるみで不正を行い隠ぺいする。加害者は企業などの
組織で、被害者は社会や消費者といった外部になる。
職務犯罪が個人的な事情が原因になって起こるのに対して、組織性犯罪は個人の資質(性格)よりも、組織の風土や文化によって(組織に入ったことによって)引き起こされるという違いがある。
“集団の成員に共有されている価値判断や行動様式の規準”を、社会心理学では「集団規範」と呼ぶ。明文化された規則もあれば、明文化されていないが慣例として行われているものもある。
企業や官庁などは、日常の業務を遂行するにあたっては、上司の指示・命令に従って行う。業務命令に従うことは、就業規則として明文化されているのが一般的である。
さて指示された業務内容が法令に違反している、あるいは倫理に反していると思われる場合に、命令された側は指示どおりに業務を遂行してよいのだろうか。
これについては、社会心理学の有名な「ミルグラムの服従実験」が参考になる。
権威のある人から指示命令されると、受けた側は多少の葛藤があっても指示命令に従ってしまう傾向が優勢になる。
それでは、集団規範によって、組織の成員に共有されている価値観・行動様式の中で最優先されるものは何だろうか。
それは成員が所属する組織が存続することである。当然、そこには、組織による不正や隠ぺいが生じる陥穽があるのだ。
たとえば企業全体としては法令順守を掲げていても、その下部組織が、改ざんやその隠ぺいによって組織全体の目標を達成したことに偽装すれば、下部組織として生き残ることができる。
縦割りされタコツボ化した組織内では、社会心理学でいう「集団の凝集性(集団が構成員を引きつけ、その集団の一員であり続けるように動機づける度合い。)」が機能するため法令違反が起こりやすい。
集団規範は同調者に対する報酬の規準として機能する一方で、逸脱者に対する制裁機能も持つので、同調圧力に抗して疑問の声を上げることは困難であるからだ。
社会心理学では組織における意思決定や組織性犯罪の成り立ちについての数多くの研究がある。こうした知見を体系的にビジネス現場に取り入れなければ、組織による情報の改ざん隠ぺいを防ぐことは難しいだろう。
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内部告発や内部通報制度など、形ばかり整えても、社会心理学の研究成果を取り入れなければ、組織的な改革は無理だということでしょう。
もっとも、官邸に人事権を握られ、違法行為であっても政治家に従うだけの官僚組織や、個々の議員が言いたいことも言えない自民党組織など、組織の存続自体に何の価値も見出せないケースであれば、いっそのこと組織をぶち壊して基礎から作り直した方が手っ取り早く、勇気ある構成員が出現してくれる方が、ずっと国民のためでもあるのです。


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