やっぱり違和感を感じる大川小を巡る二審判決
違和感を感じる大川小を巡る一審判決
東日本大震災の津波で84人の児童と教職員が犠牲となった石巻市立大川小学校をめぐる先週24日の控訴審判決を控えての関係者の動きではないかと思われます。
死者・行方不明となった児童のうちの23人の児童の遺族が市と県に約23億円の損害賠償を求めた訴訟の一審、2016年10月の仙台地裁判決では、教職員による避難誘導の過失を認定し、市と県に約14億円2600万円の支払いを命じました。
国や行政の完全勝訴率およそ98%というこの種の裁判において、このような画期的な判決が下されたことは極めて稀なことです。
さて、注目の二審判決ですが、仙台高裁は、校長ら現場の管理職と指導的立場の市教委の組織的な過失も認定し、賠償額も一審より約1千万円多い、約14億3600万円の支払いを命じました。
大川小学校はハザードマップでも浸水予想区域には含まれておらず避難場所に指定されていましたが、仙台高裁は「教師の指示が児童生徒の行動を拘束する以上、高いレベルの知識に基づいて独自にハザードマップの信頼性を検討するべきだ。」として、市や学校の事前の防災体制を厳しく批判しています。
今後の学校防災の新たな指針となるべき画期的な判決、行政や学校より被害者に寄り添う、これが本来あるべき司法の姿勢と高く評価したいところですが、一審判決と同様、著しく違和感を感じるのは、行政や公的機関有利に偏っている裁判所のこれまでの判決の傾向からは大きく外れていることに加え、東日本大震災の津波犠牲者をめぐる訴訟の判決が、それぞれの訴訟であまりにもバラついているためです。
いくつか例を挙げてみます。
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石巻市の日和幼稚園の園児12名を乗せた送迎バスが津波に遭い、園児5人が津波の犠牲になりました。そのうち4人の園児の遺族が幼稚園を相手取り、総額2億7000万円の損害賠償を求めました。
一審の仙台地裁は2014年9月、幼稚園側の責任を認め、総額1億7000万円余りの支払いを命じましたが、幼稚園側は不服として控訴し、二審の仙台高裁では、裁判と並行して和解の協議が続けられてきました。
和解協議の中で、仙台高裁は「園児の犠牲が防災対策に生かされるように」として和解を勧告。幼稚園側が法的責任を認めた上で、心から謝罪する意思を表明した一方、損害賠償を総額6000万円まで減額することが決まり、双方の間で和解が成立しました。
http://mamastar.jp/bbs/comment.do?topicId=2356454
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津波で犠牲になった常磐山元自動車学校(宮城県山元町)の教習生25人(いずれも当時18~19歳)と従業員1人の遺族は2011~2012年、計約19億7000万円の賠償金の支払いを求めて提訴。一審の仙台地裁判決は2015年1月、学校側の安全配慮義務違反を認定し、学校側に計約18億5000万円(1人当たり約4000万〜8000万円)の支払いを命じました。
控訴審の仙台高裁(小野洋一裁判長)では、2016年5月、学校側が安全上の不備を認めて陳謝した上で、教習生1人当たり50万円、計1250万円の解決金を遺族側に支払うとの内容で和解が成立しています。従業員側の和解協議は分離されており、協議を継続するということです。
解決金は学校側の支払い能力を踏まえて決定したとみられますが、一審の仙台地裁が命じた賠償金を大幅に下回っています。
https://mainichi.jp/articles/20160525/k00/00e/040/203000c
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宮城県女川町の七十七銀行女川支店の行員は支店の屋上に避難したものの、屋上を超える20メートル近くの巨大津波が襲い、12名が死亡・行方不明となりました。犠牲になった従業員3人の遺族らが、銀行が安全配慮義務を怠ったとして、銀行に約2億3000万円の賠償を求めた訴訟訴訟を起こしました。
2014年2月の一審仙台地裁判決は、原告である遺族側の請求を退けました。
印象的なのは、企業の安全配慮義務違反を認めなかった一審の齊木教朗裁判長の判決に対しての原告側の強く怒りです。
裁判でのでたらめな結論付けについては、当ブログでも繰り返し厳しく批判しているところですが、それと、まさに重なるもので、次のように表現しています。
「結論先にありきで、強引に原告らの主張を曲解し、証拠に基づかない認定や自らに都合の悪い証拠の無視、自らに都合のよい証拠には拡大認定を行い、理屈たり得ない理屈を平然と伏すなど、およそ証拠に基づく裁判とはいえない」
「公平な裁判をするべき裁判所として、あるまじき悪質さである」
https://www.huffingtonpost.jp/2014/06/14/onagawa-77_n_5494499.html
二審 仙台高裁判決も一審を支持し、最高裁の上告していましたが、2016年2月最高裁第2小法廷は、遺族側の上告を棄却する決定を出し、遺族側の敗訴が確定した。
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宮城県山元町立東保育所では町の指示で保育所にとどまり3人が亡くなりました。14年3月の仙台地裁判決は「海岸線から1,5キロの地点にあった保育所に津波が到達するとは予想できなかった」などとして遺族側敗訴とし、仙台高裁判決も遺族側の控訴を棄却しました。控訴審では園児1人の遺族と町側が和解し、鈴木将宏君(当時6歳)の遺族が上告していましたが、最高裁第2小法廷は、七十七銀行女川支店訴訟の決定と同日、遺族側の上告を退ける決定をし、遺族側の敗訴が確定しました。
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はじめに紹介した大川小学校の控訴審の小川浩裁判長は、裁判官の経歴から推測すると定年が近いのではないかと思われます。最高裁に拘束されることのがない定年間近の裁判官が、公正中立で極めて妥当な判決を書くことは定説となっています。
この訴訟では、幸運にも一審、二審と良心的な裁判官に恵まれたのでしょうか。
それにしても、あまりにもバラつきが大きい津波の犠牲者をめぐる判決ですが、判断基準が曖昧です。
当ブログで度々指摘している通り、上告却下・不受理となる上告事件のほとんどは、最高裁で審理されていないにもかかわらず、上告費用だけが騙し取られる「上告詐欺」に該当するケースであり、最高裁の不労所得となっています。
東日本大震災による津波の犠牲者・行方不明者はおよそ2万人です。多くの対象者が見込める災害で、一部の裁判だけが、遺族に訴訟を提起させるためのパフォーマンスとして利用されているとしたら言語道断です。
上告詐欺! 国家賠償詐欺!
上告不受理・上告却下は偽装裁判!!
食材偽装の陰で 重大で悪質な「偽装上告審」!!
「偽装上告審」の見分け方!!


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