安倍政権による安倍政権のための特定秘密保護法
前回は、今現在、読んでいただきたい本ということで、「国家と秘密 隠される公文書」(久保亨、瀬畑源 著)を紹介していますが、この最後の章が「特定秘密保護法と公文書管理」というタイトルです。安倍政権の下で、2013年12月に制定された特定秘密保護法ですが、周辺の法整備がされないまま、如何に杜撰な状態で成立、施行されたかということが書かれています。
簡単にまとめてみます。
特定秘密に指定できるのは、①防衛、②外交、③特定有害活動(スパイ行為等)防止、④テロ防止、の4つの項目です。
● この法律の最大の狙い
これら4項目については、もともと情報公開法に基づいて情報公開請求しても非開示になっており、特定秘密保護法制定以前から「知る権利」が大幅に制限されていた。
よって、この法律の最大の狙いは「情報漏洩」である。
● 秘密と情報公開のバランスは、最新の研究成果である「ツワネ原則」に従うべきである。
「ツワネ原則」については、国家秘密は否定しないが、秘密指定に厳格な縛りをかけ、国民のアクセス権を最大限に認めようとする内容であるが、安倍首相はこれを軽視している。
● その結果、日本の特定秘密はどのようになったか。
特定秘密を指定できるのは「行政機関の長、つまり各省庁の大臣や長官。
↓
必然的に秘密は過剰に設定されることになる。
↓
秘密を最小限にコントロールするための監視機関の存在が重要。
しかし、特定秘密保護法には監視機関について定めた条文が存在しない。
法案成立直前に、安倍首相の提案で「監視機関」として内閣官房に設置された「内閣保全監視委員会」「情報保全監察室」は、秘密の指定漏れがないかを監視する内部統制機関である。
● 際限のない特定秘密期間
「秘密に指定した文書は、指定が不要になった時にはそれを解除し、検証に資するための公開する」のが原則で、特定秘密は5年以内の有効期限が設定され、30年まで延長可能であるが、「内閣の承認を得た場合」(閣議決定)で最大60年まで延ばせ、一部についてはそれ以上延ばすことも可能。
● 特定秘密保護法と公文書管理法との関係
・ 特定秘密であっても公文書であることには変わりないが、公文書管理法との整合性があいまいであるため、「特定秘密管理簿」が作られ二重帳簿になることで、国民からの検証の道が閉ざされる。
・ 国立公文書館で永久に保存されるか、廃棄するかは公文書管理法の手続きに則って行われる必要があるが、廃棄するためには内閣総理大臣の同意が必要。
こうして見ていくと、多くの問題を抱えながら施行された特定秘密保護法ですが、特定秘密に指定するか否かは行政機関に大きな権限が与えられており、しかも「監視機関」さえも独立した機関ではなく、内閣府に「内閣保全監視委員会」「情報保全監察室」として設置されているのですから、単に体裁を整えたというだけで、内閣や行政によって恣意的に運用されることは目に見えています。
まともな内閣ならまだしも、安倍政権のような時代錯誤の政治家連中に、このような法律と制度を運用させるのでしたら、国民が正確な情報に基づいて主権を行使することが妨げられますし、政治の暴走が危惧されます。
現実に、そのような状況がすでに起こっています。
さらに、極めつけは、特定秘密の指定や解除の統一基準を議論する有識者会議「情報保全諮問会議」です。この会議が、2014年以降、首相官邸で開かれているということですが、その座長を務めるのが渡辺恒雄読売新聞本社会長といいますから、まさに、お友達のためのお友達会議といえます。「準備会合」として議事録も作成されていないということが、それを証明しています。
今、多くの国民が喉に刺さった小骨のように心に引っかかっていることが安倍政権の今後の行方ではないかと思われますが、政権の存続を揺るがすまでに至った原因は、安倍政権の下で行われた行政の暴走と政治の私物化であることは明白です。これを特定秘密保護法との関連で見ていくと、安倍政権が政治を私物化するために特定秘密保護法を成立させたのか、あるいは特定秘密保護法ができたから、好き放題に行政をコントロールし、お友達に便宜を図ってきたのか、鶏が先か卵が先かという議論になってしまいそうですが、いずれにしても、安倍政権による安倍政権のための特定秘密保護法といえるのではないでしょうか。
最後に、情報公開と適切な公文書の管理という観点について、最高裁がどのような見識をもっているのかが理解できるひとつの判例を「あとがき」から紹介します。
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沖縄返還をめぐる密約文書の開示に関する最高裁判決
沖縄返還をめぐる密約文書の開示を求め、元毎日新聞記者の西山太吉さんや作家の澤地久枝さんなど23人が2009年に国を訴えていたものです。2014年7月14日の最高裁判決は、密約文書が存在したこと自体については、二審の東京高裁判決を支持し、認めざるを得ませんでした。しかし、「すでに文書は廃棄された」という国側の主張を認め、「開示せよ」との訴えについては退けています。情報公開の請求者に対し文書の存在を証明する責任まで求めた今回の判決は、情報公開法と公文書管理の基本理念に反しており、行政が自分の都合で情報を隠すことを認める特定秘密保護法の論理に立つものです。
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安倍政権による時代錯誤の法律の制定や政治の私物化で、前近代的な国家の仕組みが白日のもとにさらされる羽目になっていますが、最高裁を頂点とする裁判所が前近代的な組織であるということは、当ブログでたびたび指摘してきたことであり、今更、驚くべきことではありませんが、前近代的な司法機関が存在してこそ、安倍政権のような暴走政治が生まれると考えれば当然の結果といえます。
安倍政権がいつまで続くかはわかりませんが、安倍政権下で成立した共謀罪、安保法制、特定秘密保護法など国民主権を制限するよな時代錯誤の法律は、その後の政権で徹底的に検証され、撤廃されるべきでしょう。


簡単にまとめてみます。
特定秘密に指定できるのは、①防衛、②外交、③特定有害活動(スパイ行為等)防止、④テロ防止、の4つの項目です。
● この法律の最大の狙い
これら4項目については、もともと情報公開法に基づいて情報公開請求しても非開示になっており、特定秘密保護法制定以前から「知る権利」が大幅に制限されていた。
よって、この法律の最大の狙いは「情報漏洩」である。
● 秘密と情報公開のバランスは、最新の研究成果である「ツワネ原則」に従うべきである。
「ツワネ原則」については、国家秘密は否定しないが、秘密指定に厳格な縛りをかけ、国民のアクセス権を最大限に認めようとする内容であるが、安倍首相はこれを軽視している。
● その結果、日本の特定秘密はどのようになったか。
特定秘密を指定できるのは「行政機関の長、つまり各省庁の大臣や長官。
↓
必然的に秘密は過剰に設定されることになる。
↓
秘密を最小限にコントロールするための監視機関の存在が重要。
しかし、特定秘密保護法には監視機関について定めた条文が存在しない。
法案成立直前に、安倍首相の提案で「監視機関」として内閣官房に設置された「内閣保全監視委員会」「情報保全監察室」は、秘密の指定漏れがないかを監視する内部統制機関である。
● 際限のない特定秘密期間
「秘密に指定した文書は、指定が不要になった時にはそれを解除し、検証に資するための公開する」のが原則で、特定秘密は5年以内の有効期限が設定され、30年まで延長可能であるが、「内閣の承認を得た場合」(閣議決定)で最大60年まで延ばせ、一部についてはそれ以上延ばすことも可能。
● 特定秘密保護法と公文書管理法との関係
・ 特定秘密であっても公文書であることには変わりないが、公文書管理法との整合性があいまいであるため、「特定秘密管理簿」が作られ二重帳簿になることで、国民からの検証の道が閉ざされる。
・ 国立公文書館で永久に保存されるか、廃棄するかは公文書管理法の手続きに則って行われる必要があるが、廃棄するためには内閣総理大臣の同意が必要。
こうして見ていくと、多くの問題を抱えながら施行された特定秘密保護法ですが、特定秘密に指定するか否かは行政機関に大きな権限が与えられており、しかも「監視機関」さえも独立した機関ではなく、内閣府に「内閣保全監視委員会」「情報保全監察室」として設置されているのですから、単に体裁を整えたというだけで、内閣や行政によって恣意的に運用されることは目に見えています。
まともな内閣ならまだしも、安倍政権のような時代錯誤の政治家連中に、このような法律と制度を運用させるのでしたら、国民が正確な情報に基づいて主権を行使することが妨げられますし、政治の暴走が危惧されます。
現実に、そのような状況がすでに起こっています。
さらに、極めつけは、特定秘密の指定や解除の統一基準を議論する有識者会議「情報保全諮問会議」です。この会議が、2014年以降、首相官邸で開かれているということですが、その座長を務めるのが渡辺恒雄読売新聞本社会長といいますから、まさに、お友達のためのお友達会議といえます。「準備会合」として議事録も作成されていないということが、それを証明しています。
今、多くの国民が喉に刺さった小骨のように心に引っかかっていることが安倍政権の今後の行方ではないかと思われますが、政権の存続を揺るがすまでに至った原因は、安倍政権の下で行われた行政の暴走と政治の私物化であることは明白です。これを特定秘密保護法との関連で見ていくと、安倍政権が政治を私物化するために特定秘密保護法を成立させたのか、あるいは特定秘密保護法ができたから、好き放題に行政をコントロールし、お友達に便宜を図ってきたのか、鶏が先か卵が先かという議論になってしまいそうですが、いずれにしても、安倍政権による安倍政権のための特定秘密保護法といえるのではないでしょうか。
最後に、情報公開と適切な公文書の管理という観点について、最高裁がどのような見識をもっているのかが理解できるひとつの判例を「あとがき」から紹介します。

沖縄返還をめぐる密約文書の開示に関する最高裁判決
沖縄返還をめぐる密約文書の開示を求め、元毎日新聞記者の西山太吉さんや作家の澤地久枝さんなど23人が2009年に国を訴えていたものです。2014年7月14日の最高裁判決は、密約文書が存在したこと自体については、二審の東京高裁判決を支持し、認めざるを得ませんでした。しかし、「すでに文書は廃棄された」という国側の主張を認め、「開示せよ」との訴えについては退けています。情報公開の請求者に対し文書の存在を証明する責任まで求めた今回の判決は、情報公開法と公文書管理の基本理念に反しており、行政が自分の都合で情報を隠すことを認める特定秘密保護法の論理に立つものです。
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安倍政権による時代錯誤の法律の制定や政治の私物化で、前近代的な国家の仕組みが白日のもとにさらされる羽目になっていますが、最高裁を頂点とする裁判所が前近代的な組織であるということは、当ブログでたびたび指摘してきたことであり、今更、驚くべきことではありませんが、前近代的な司法機関が存在してこそ、安倍政権のような暴走政治が生まれると考えれば当然の結果といえます。
安倍政権がいつまで続くかはわかりませんが、安倍政権下で成立した共謀罪、安保法制、特定秘密保護法など国民主権を制限するよな時代錯誤の法律は、その後の政権で徹底的に検証され、撤廃されるべきでしょう。


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