ネット社会の危険性!
前回の記事の続きです。
法科大学院生から、裁判資料の提供を依頼されたわけですが、資料を基にレポートを作成し、院生のブログで公開するなどということは、当初の院生のからのメールには書かれていなかったため、私は、そのようなことは想定外であるとして断りました。
ですから、それで了解の返事をいただくだけでしたら、私は、この院生との一件について特に問題視することはありませんでした。
ところが、私の裁判を批判するような次のような内容のメールが届きましたので、“やっぱり”と、その院生の意図することがわかったのです。

失礼なお願いにもかかわらず、丁寧なご回答ありがとうございます。
資料の件についてはとてもよく分かりました。
> 私の最終目標は、再審に持ち込み、何としてもデタラメの二審判決を訂正させることですので、それに向けて、今後も、行動していくつもりです。
再審は困難が多いですが、これが一番の王道ではないかと思います。
認められることをおいのりしております。
ブログを拝見していて、感じた点が何点かあるのですが
(判決を見せていただきたいというのはそれを確かめたかったからというのもありました)
事案としては、
労基署に相談した結果、ご主人が職場で孤立し、和解案をまとめてもらったものの、内容の不備によりご主人の権利が害されることになったため、労基署に対して国家賠償請求をたてた、という理解でよろしいのでしょうか。
任意的訴訟担当ということで、ご主人の分についてもろーずまりーさんが訴訟をしたということですが、裁判所の判決の中で、任意的訴訟担当は認められないとか、そういったことになっているのではないでしょうか?
私の勉強した限りだと、任意的訴訟担当を今回のようなケースで認めるのは少し難しい気がしまして、認められないとすれば、少なくともご主人に関係する部分は訴訟が却下されてしまう(実質的な部分の判断がされないで、門前払いされてしまう)のです。
信義則についての判断は、実質的な部分の判断ですから、高裁で触れられなかったとしたら、そのような可能性があるのではないかな、と思うのです。
ろーずまりーさんに固有の分については、失礼ですが、こう、遠回りなかんじというか、和解で害された権利自体はご主人のものですので、人の権利を害されたことによる慰謝料というと、かなり認められにくいのではないかと思います。
それから、信義則という主張ですが、 これは、労基署に誠実な和解案を提案すべき義務があったという根拠としてあげられていたのでしょうか?
信義則という主張は使うのがとても難しいものであります。
なぜなら、他の法律で明文で書かれている義務と違い、信義則は目に見えません。
1、**という信義誠実の原則があり
2、そのような信義則上の義務に違反しているという点について主張立証をしなければならないというように、義務の存在から立証をしなければならないからです。
ですから、もしかすると、労基署に職務上の義務がある(←組織法や労働関係法規から立証)が、それに違反しているというように、具体的に既に定められている義務を主張する方が、説得力があるものになるのではないかと思います。
最後の一点としては、和解の仕方なのですが、和解案の説明の段階で労基署から違う説明をされていたのにもかかわらず、和解条項が別の不利な内容になったいたために、そのような内容だと分からずに署名してしまった、という事実なのでしょうか?
だとしたら、会社との和解自体が錯誤無効になり、民事刑事免責という条項もなしになるということができると思います。
(本件の裁判がおかしいということには変わりはないのに、それを変更はできませんが)少なくとも対会社との関係では、権利行使が問題なくできるのではないでしょうか。
もしそうではなく、説明と違う内容だと分かっていたのに、和解に署名してしまったとなると、和解のあっせんに問題があった事と、和解に署名したこととの間の因果関係(法律の世界の因果関係は、条件関係ではなく、相当因果関係というものになります)があやしくなり裁判所もなかなか認めにくくなるのではないかと思います。
(省略)
最近は特に寒いので、お身体にお気をつけください。
○○○○
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○○○○様
詳しい法律的アドバイスありがとうございます。
ただ、いくつか気になるところがありました。
手短にお答えします。
一点目ですが、
> 事案としては、
> 労基署に相談した結果、ご主人が職場で孤立し、和解案をまとめてもらったもの
> の、内容の不備によりご主人の権利が害されることになったため、労基署に対し
> て国家賠償請求をたてた、という理解でよろしいのでしょうか。
この部分は、労基署がかかわってまとめた和解案のように受け取れますが、和解案の内容は会社が独自に作成したものです。
また、“職場で孤立”、この部分も違っており、経営側が原因です。
問題は、労基署も警察などと同様に民事不介入が原則のようで、和解の仲介などすべきではないにもかかわらず、和解を仲介したことです(長くなるので詳しい説明は省きます)。
このことについは裁判(裁判以前にもですが)で追及したところ、当初、行政は和解を仲介していないと強く否定していましたが、私が、証拠を提示して反論したところ、認めざるを得なくなったわけです。
二点目、任意的訴訟担当についてですが、
一審判決では、任意的訴訟担当の要件を、かなり狭く解釈されているとして、控訴理由書、上告受理申立理由書で、学説に基づき反論しましたが、最終的には裁判所の判断に委ねられることは、言うまでもないことです。
ただ、一審の最初の裁判官は、私に原告適格を立証するよう求め、一回目の口頭弁論で、夫からの授権を確認の上で、裁判を続行し、その後、細部の詰め(賠償額等)に入りましたし・・・
三点目、信義則についてですが、
> ろーずまりーさんに固有の分については、失礼ですが、こう、遠回りなかんじと
> いうか、和解で害された権利自体はご主人のものですので、人の権利を害された
> ことによる慰謝料というと、かなり認められにくいのではないかと思います。
上記に関することはプライバシーに関することなので、ブログ等では公開しておりませんが、そのような意味での慰謝料ではありません。
(裁判では、別な理由で主張しています。)
> それから、信義則という主張ですが、 これは、労基署に誠実な和解案を提案すべ
> き義務があったという根拠としてあげられていたのでしょうか?
この点は、一点目の理由から、おわかりいただけると思います。
信義則のことは、ブログでも繰り返し書いていますが、私の当初の電話相談にかかわることです。
信義則のことは、信義則の主張が妥当であるかの判断はおろか、信義則の主張をしていることすら、判決書には書かれませんでした。
資料の一部でも見せていただきたいというご依頼でしたが、一部の情報のみを見て事件の全体像を把握しようとすることは、以上のように誤解を生じる危険性をはらんでいますので、私がもっとも危惧したことでした。
それで、前回お伝えした理由とともに、お断りするひとつの大きな要因であったわけですが。
(省略)
仙台へは、たまに行きますが、こちらより寒さが身にしみますね。
それでは、失礼します。
ろーずまりー
労基署をめぐる一連の事件は、けっこう複雑なケースであると思いますし、ブログで公開しているのは、プライバシーにさしさわりのない裁判での主張の一部にすぎず、そのような一部の資料を基に事件の全体像を把握することは、到底無理です。
(信義則に関する事実関係など、ブログで公開しているにもかかわらず、誤って捉えられているところもけっこうありましたし)
院生には全く関係のない私の裁判に関することを、事実と異なる勝手な憶測で、ネット上であれこれ批判されたりすることは、非常に不愉快であり迷惑です。
尚、院生が名前を名乗っての、上のメールの文章は「批判」と受け取れるものですが、ブログでの論争のきっかけとなった記事に対する院生のコメントは、言葉遣いが「批判」というよりは、完全に「けなし」と受け取れるものであったことはお伝えしておきます。
上の院生からのメールで、院生の意図していたことがわかりましたし、生産的でない院生との論争に時間を費やすことは無駄であると判断しましたので、その後、院生からのメールの受信拒否、ブログのコメント拒否に設定したことは言うまでもありません。
折りしも、お笑いタレントのブログに事実無根の中傷を書き込んだ18名が書類送検されるということが報道され、一人ひとりが責任をもって意見や情報を発信する必要性を改めて認識させられます。
2ヶ月ほど前、私は、『ネット社会の危険性』というテーマの講演を聞く機会がありました。
いかがわしいおじさんが、女子高生に成りすまして、女子高生が集うサイトで悪さをたくらんだり、自分とは似ても似つかぬアイドルのような顔写真を使用して、女の子を誘い出したりする例もあるそうです。
直接、顔も声も確認できないネット上の相手は、一部であるとは思いますが、実は狼だったりすることもあるのです。
ですから、うわべだけの身分や地位に惑わされず、ちょっとでもおかしいと思ったときは警戒すべきです。
法科大学院生との一件につきましては、私のブログの趣旨に外れるもので、記事にするかどうか迷ったのですが、どうしても許しがたいことでしたので書かせていただきました。 記事の内容を期待はずれに思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、次回からは、本題に戻りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
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