アメリカの属国である限り 領土問題は解決しないと思いますよ
ますは、前回のおさらいです。
自衛隊の海外派遣とリンクする厚木基地騒音訴訟の最高裁判決
自衛隊の位置づけについては、昭和62(オ)58〔平成5年2月25日 判決〕で次のように示しています。
「防衛庁長官は、自衛隊に課せられた我が国の防衛等の任務の遂行のため自衛隊機の運航を統括し、その航行の安全及び航行に起因する障害の防止を図るため必要な規制を行う権限を有するものとされているのであって、自衛隊機の運航は、このような防衛庁長官の権限の下において行われるものである。」
これに「統一指揮権密約」を加えると、その力関係は次のようになります。
米軍(米国)>防衛大臣(日本政府)>自衛隊
さらに、昭和34(あ)710(昭和34年12月16日 判決)、所謂、砂川判決では、自衛隊の戦力について、「同条項(憲法9条2項)がその保持を禁止した戦力とは、わが国がその主体となつてこれに指揮権、管理権を行使し得る戦力をいうものであり、結局わが国自体の戦力を指し」と示しています。
これらの関係から、「日本は、アメリカの属国である」というのが前回の結論でしたが、前述の関係を別の観点から見てみると、憲法との兼ね合いで、おかしなことになっていることがわかります。
砂川判決に従えば、「統一指揮権密約」によってアメリカの指揮の下に活動する戦力(自衛隊)は、わが国(日本)自体の戦力ではないということになります。
であるならば、自衛隊が海外で戦闘行為を行ったとしても、憲法が保持を禁止した戦力には該当せず、合憲ということになります。
ところが、憲法9条に関しての自衛隊の違憲性を論じる前に、忘れてはならない大前提があります。それが、憲法で最も重要な条文です。
数年前、安倍首相が国会で、「日本国憲法で一番大切な条文は何ですか?」と質問され、答えられなかったのは有名なエピソードですが、憲法の存在意義を表現しているともいえる最も重要な条文は、憲法13条です。
※ 詳しく知りたい方は、小室直樹氏の「日本国憲法の問題点」第一章「失われた日本国憲法の精神」をお奨めします。
第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
自衛隊員も日本国民であるわけですから、憲法13条が規定する権利については、当然、保障されなければなりません。それにもかかわらず、日本政府が憲法9条の解釈を変更して、米軍の指揮下で生命の危険が脅かされる戦闘行為に自衛隊を差し出すことは、安倍政権が憲法13条を軽視し、重大な憲法違反を重複して行っていることになります。
とは言いましても、前述の上下関係で、米軍が日本政府の上位に位置している限り、憲法はまったく機能しないということになります。
密約が公になって密約ではなくなっている現在においては、この点について、政府は納得のいく説明を国民にする義務があります。
さて、現実的には、「統一指揮権密約」があり、日本はアメリカの属国という位置づけであるとしても、第2次安部政権になる前は、海外での戦闘行為を拒否することで憲法9条の理念が堅持され、ある程度は主権国家として機能していたのではないかと考えられます。ところが、憲法9条の解釈を変更して自衛隊をアメリカ軍の指揮下に差し出すことができるようにしたということは、日本の主権を排除し、属国化に舵を切ったということになります。
今月15,16日、プーチン大統領の訪日で、北方領土返還に期待がもたれていましたが、やはり予想通りの結果でした。
国家としての主権を放棄し、アメリカの属国化を露見させている安倍首相と交渉しても島が戻ってくるはずがありません。
日本政府が日本に駐留する米軍をコントロールできない事態では、仮に島を返還したところで、そこに米軍基地が作られるのが落ちです。安倍首相と交渉しても無駄だということになります。
北方領土を返還してもらいたいのなら、まずはアメリカの属国を解消し、真の独立を果たすことが先です。根本的問題を解決せずに小手先だけで解決しようとしても無意味です。
経済、外交、国内問題で・・・、何をやっても上手くいかないが、国民の大半が反対する法律だけが次々とスピーディーに成立していく異常事態。それにもかかわらず、既存のマスコミの支持率だけが高いまま維持されている気持ち悪さ。何かで成果をあげたかった安倍政権が、思いつきで北方領土問題を利用しよとしたのではないかと思われ、ほとんど進展がなかったのも当然の結果といえます。



- 関連記事