自衛隊の海外派遣とリンクする厚木基地騒音訴訟の最高裁判決
厚木基地騒音訴訟の最高裁判決が8日言い渡されましたが、その経緯は次のようなものです。
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(米軍と自衛隊が共同使用する)厚木基地の周辺住民約7000人が米軍機と自衛隊機の飛行差し止めと損害賠償を国に求めた「第4次厚木基地騒音訴訟」の上告審判決で、最高裁第1小法廷は8日、自衛隊機の夜間・早朝の飛行禁止を命じた2審判決を破棄し、住民側の差し止め請求を棄却した。飛行差し止めについては住民側の逆転敗訴が確定した。
周辺住民らは当初、民事訴訟を起こし、騒音被害に対する損害賠償と米軍機、自衛隊機の飛行差し止めを求めていた。最高裁は1993年2月の1次訴訟判決で、差し止め請求を退ける一方で国の賠償責任を認め、全国の基地訴訟で賠償によって被害救済を図る司法判断が定着した。
一方、93年判決は自衛隊機の運航が「防衛庁長官(当時)の公権力の行使に当たる」との判断を示し、行政訴訟であれば差し止めが認められる可能性を残した。このため住民側は4次訴訟で民事訴訟とともに初めて行政訴訟を起こした。1、2審は米軍機飛行差し止めの請求は退けたものの、全国で初めて自衛隊機の飛行差し止めを認めたため、最高裁の判断が注目されていた。
小法廷は、飛行禁止時間の延長を求める住民側と、差し止めの取り消しを求める国側の双方の上告を受理。審理対象を自衛隊機の差し止め部分に限定し、2審の結論見直しに必要な弁論を開いた。
今回は、基地の騒音を巡る行政訴訟で初の最高裁判決となった。
http://mainichi.jp/articles/20161208/k00/00e/040/261000c#csidxd483b7b7c2ccc169be25a46936573fb より一部抜粋。
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住民側にとっては一審、二審より後退した判断となった今回の最高裁判決ですが、これは集団的自衛権の行使を認めた安保関連法と深くリンクしていると考えられます。
といいますのは、今回の最高裁判決は、日米間の密約である「統一指揮権密約」をかなり意識した判決であるということがうかがえるからです。
「統一指揮権密約」とは、「戦争になったら、日本軍は米軍の指揮下に入る」というもので、1952年7月と1954年2月に当時の吉田首相がアメリカの極東軍司令官だったマーク・クラーク大将と駐日アメリカ大使ロバート・マーフィーとの間で口頭で結んだ密約です。
吉田首相が口頭で了承したことを証明する機密文書を、獨協大学名誉教授の小関彰一氏が1081年にアメリカ公文書館で見つけ、矢部宏治氏の「日本はなぜ『戦争ができる国』になったのか」の121ページに、その証拠となる貴重な資料が掲載されています。
また、昭和62(オ)58〔平成5年2月25日 判決〕では、自衛隊の位置づけを次のように示しています。
「防衛庁長官は、自衛隊に課せられた我が国の防衛等の任務の遂行のため自衛隊機の運航を統括し、その航行の安全及び航行に起因する障害の防止を図るため必要な規制を行う権限を有するものとされているのであって、自衛隊機の運航は、このような防衛庁長官の権限の下において行われるものである。」
これに「統一指揮権密約」を加えると、その力関係は次のようになります。
米軍(米国)>防衛大臣(日本政府)>自衛隊
この関係を考慮に入れて厚木基地騒音訴訟を検証してみると、この力関係に沿ったものになっていることがわかります。
厚木基地騒音訴訟は、国(日本)に求めた訴訟であって、仮に、米軍機の飛行差し止めを最高裁が認めたとしても、日本は米軍に指図する権限はないということになります。ですから、最高裁はこの点について判断を避けたものと考えられます。
ところで、“「安保関連法の成立によって、「指揮権密約」のもつ意味が大きく変化した”ということが、矢部宏治氏の「日本はなぜ『戦争ができる国』になったのか」にわかりやすく書かれていますので、一部を要約して抜粋します。
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安保関連法の成立によって、「指揮権密約」のもつ意味が大きく変化した
日本の米軍基地などで、これまで日本はさまざまなかたちでアメリカの戦争に協力してきたが、憲法9条のお陰で、国外に出てた闘うことだけは拒否できた。だから、いままでは「指揮権密約」、つまり「米軍が日本軍を自由に指揮するための密約」についてはほとんど議論されることはなかった。たとえそういう密約があったとしても、国内だけの話なら、専守防衛という日本の方針とそう矛盾はないと考えられてきた。ところが昨年、成立した安保関連法によって、状況は一変した。仮に「指揮権密約」をのこしたまま、日本が海外で軍事行動をおこなうようになると、
「自衛隊が日本の防衛とはまったく関係のない場所で、米軍の指示のもと、危険な軍事行動に従事させられる可能性」や、
「日本が自分で何も決断しないうちに、戦争の当事国となる可能性」
が、飛躍的に高まってしまうからです。
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安保法制の成立・施行により、今後は自衛隊が米軍の指揮下で活動する機会が格段に増えることが予想されるため、自衛隊もアメリカ軍並みの行動をとらなければならず、米軍機の飛行を認めるのなら、自衛隊機の飛行も、当然、同じように認められるべきと考えられ、それが今回の最高裁判決に反映されたと推測されます。
ところで、昭和34(あ)710(昭和34年12月16日 判決)、所謂、砂川判決では、自衛隊の戦力について、「同条項(憲法9条2項)がその保持を禁止した戦力とは、わが国がその主体となつてこれに指揮権、管理権を行使し得る戦力をいうものであり、結局わが国自体の戦力を指し」と示しています。
ということは、「統一指揮権密約」に従って、自衛隊が日本の指揮ではなく、アメリカ軍の指揮の下に戦闘行為をするということは、まさに、日本はアメリカの属国ということの証明でもあるのです。
さらに、当ブログで指摘してきたように、特に軍事・防衛に関係する問題については、アメリカからの強い働きかけが最高裁の判断に大きく影響を及ぼしています。
これもまた、日本がアメリカの属国であることの証明です。
砂川最高裁判決が出されるまでの背景の追及が不可欠
このような国家の主権を否定する状況については、日本国民は大いに怒り、政府に説明を求めるべきなのですが、大半の日本人は政治に無関心で、自分たちが置かれている現状について正しい知識ももっていなければ、意思表示することすらできません。
という意味では、韓国国民の方が、はるかに進歩的といえます。



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(米軍と自衛隊が共同使用する)厚木基地の周辺住民約7000人が米軍機と自衛隊機の飛行差し止めと損害賠償を国に求めた「第4次厚木基地騒音訴訟」の上告審判決で、最高裁第1小法廷は8日、自衛隊機の夜間・早朝の飛行禁止を命じた2審判決を破棄し、住民側の差し止め請求を棄却した。飛行差し止めについては住民側の逆転敗訴が確定した。
周辺住民らは当初、民事訴訟を起こし、騒音被害に対する損害賠償と米軍機、自衛隊機の飛行差し止めを求めていた。最高裁は1993年2月の1次訴訟判決で、差し止め請求を退ける一方で国の賠償責任を認め、全国の基地訴訟で賠償によって被害救済を図る司法判断が定着した。
一方、93年判決は自衛隊機の運航が「防衛庁長官(当時)の公権力の行使に当たる」との判断を示し、行政訴訟であれば差し止めが認められる可能性を残した。このため住民側は4次訴訟で民事訴訟とともに初めて行政訴訟を起こした。1、2審は米軍機飛行差し止めの請求は退けたものの、全国で初めて自衛隊機の飛行差し止めを認めたため、最高裁の判断が注目されていた。
小法廷は、飛行禁止時間の延長を求める住民側と、差し止めの取り消しを求める国側の双方の上告を受理。審理対象を自衛隊機の差し止め部分に限定し、2審の結論見直しに必要な弁論を開いた。
今回は、基地の騒音を巡る行政訴訟で初の最高裁判決となった。
http://mainichi.jp/articles/20161208/k00/00e/040/261000c#csidxd483b7b7c2ccc169be25a46936573fb より一部抜粋。
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住民側にとっては一審、二審より後退した判断となった今回の最高裁判決ですが、これは集団的自衛権の行使を認めた安保関連法と深くリンクしていると考えられます。
といいますのは、今回の最高裁判決は、日米間の密約である「統一指揮権密約」をかなり意識した判決であるということがうかがえるからです。
「統一指揮権密約」とは、「戦争になったら、日本軍は米軍の指揮下に入る」というもので、1952年7月と1954年2月に当時の吉田首相がアメリカの極東軍司令官だったマーク・クラーク大将と駐日アメリカ大使ロバート・マーフィーとの間で口頭で結んだ密約です。
吉田首相が口頭で了承したことを証明する機密文書を、獨協大学名誉教授の小関彰一氏が1081年にアメリカ公文書館で見つけ、矢部宏治氏の「日本はなぜ『戦争ができる国』になったのか」の121ページに、その証拠となる貴重な資料が掲載されています。
また、昭和62(オ)58〔平成5年2月25日 判決〕では、自衛隊の位置づけを次のように示しています。
「防衛庁長官は、自衛隊に課せられた我が国の防衛等の任務の遂行のため自衛隊機の運航を統括し、その航行の安全及び航行に起因する障害の防止を図るため必要な規制を行う権限を有するものとされているのであって、自衛隊機の運航は、このような防衛庁長官の権限の下において行われるものである。」
これに「統一指揮権密約」を加えると、その力関係は次のようになります。
米軍(米国)>防衛大臣(日本政府)>自衛隊
この関係を考慮に入れて厚木基地騒音訴訟を検証してみると、この力関係に沿ったものになっていることがわかります。
厚木基地騒音訴訟は、国(日本)に求めた訴訟であって、仮に、米軍機の飛行差し止めを最高裁が認めたとしても、日本は米軍に指図する権限はないということになります。ですから、最高裁はこの点について判断を避けたものと考えられます。
ところで、“「安保関連法の成立によって、「指揮権密約」のもつ意味が大きく変化した”ということが、矢部宏治氏の「日本はなぜ『戦争ができる国』になったのか」にわかりやすく書かれていますので、一部を要約して抜粋します。

安保関連法の成立によって、「指揮権密約」のもつ意味が大きく変化した
日本の米軍基地などで、これまで日本はさまざまなかたちでアメリカの戦争に協力してきたが、憲法9条のお陰で、国外に出てた闘うことだけは拒否できた。だから、いままでは「指揮権密約」、つまり「米軍が日本軍を自由に指揮するための密約」についてはほとんど議論されることはなかった。たとえそういう密約があったとしても、国内だけの話なら、専守防衛という日本の方針とそう矛盾はないと考えられてきた。ところが昨年、成立した安保関連法によって、状況は一変した。仮に「指揮権密約」をのこしたまま、日本が海外で軍事行動をおこなうようになると、
「自衛隊が日本の防衛とはまったく関係のない場所で、米軍の指示のもと、危険な軍事行動に従事させられる可能性」や、
「日本が自分で何も決断しないうちに、戦争の当事国となる可能性」
が、飛躍的に高まってしまうからです。
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安保法制の成立・施行により、今後は自衛隊が米軍の指揮下で活動する機会が格段に増えることが予想されるため、自衛隊もアメリカ軍並みの行動をとらなければならず、米軍機の飛行を認めるのなら、自衛隊機の飛行も、当然、同じように認められるべきと考えられ、それが今回の最高裁判決に反映されたと推測されます。
ところで、昭和34(あ)710(昭和34年12月16日 判決)、所謂、砂川判決では、自衛隊の戦力について、「同条項(憲法9条2項)がその保持を禁止した戦力とは、わが国がその主体となつてこれに指揮権、管理権を行使し得る戦力をいうものであり、結局わが国自体の戦力を指し」と示しています。
ということは、「統一指揮権密約」に従って、自衛隊が日本の指揮ではなく、アメリカ軍の指揮の下に戦闘行為をするということは、まさに、日本はアメリカの属国ということの証明でもあるのです。
さらに、当ブログで指摘してきたように、特に軍事・防衛に関係する問題については、アメリカからの強い働きかけが最高裁の判断に大きく影響を及ぼしています。
これもまた、日本がアメリカの属国であることの証明です。
砂川最高裁判決が出されるまでの背景の追及が不可欠
このような国家の主権を否定する状況については、日本国民は大いに怒り、政府に説明を求めるべきなのですが、大半の日本人は政治に無関心で、自分たちが置かれている現状について正しい知識ももっていなければ、意思表示することすらできません。
という意味では、韓国国民の方が、はるかに進歩的といえます。



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