TBS「ひるおび」は“国家賠償詐欺”の片棒を担いでいるのか?!
この時間帯、普段はテレビを見ないので消そうとしたのですが、放送していたのが、当ブログのメインテーマである国家賠償訴訟に関する事例だったで、ちょっと見てみることにしました。
法律的な問題を設定して、それについて出演者にイエスかノーで答えを求め、最後に八代弁護士が法律的な解説をするというコーナーでした。

問題設定は、次のようなものです。
Q 女性会社員が、仕事が遅くなったので、買ったばかりの愛車に同僚を乗せて送ってあげることにした。普段あまり通らない県道を走っていたところ、道路に開いていた大きな穴で、突然、衝撃を受け、そのせいで新車に大きな傷がついた。
女性は、県に車の修理費を払ってもらえるのか?
A 八代弁護士の判断は、国家賠償法第2条に基づいて「払ってもらえる」というものでした。
国家賠償法 第二条1項
道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。
「どんな場合に瑕疵(欠陥)があると認められるのか?」ということについては、大阪高裁1980年7月25日判決を引用して「一般の通行に支障を及ぼす場合、管理に瑕疵(欠陥)がある。」と認められるということでした。
しかし、前方不注意やスピードの出し過ぎなど運転者に過失がある場合には、過失相殺され修理費用が減額される場合もあるということでした。
(番組の概要はこちらのサイトで
http://jcc.jp/sp/living/59782/)
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常々、国家賠償制度がほとんど機能していないということを痛感している私としては、国家賠償制度の実態には一切触れずに、制度が適正に機能しているかのような解説は無責任極まりない、と率直に感じました。
要するに、このようなケースの場合、車の修理代を払ってもらえる可能性が高いということを視聴者の伝え、同じようなケースで心当たりのある人に国家賠償制度の利用を促すことが目的ではないかとさえ、私は勘ぐってしまったのです。
国家賠償訴訟の勝訴率等については一切公表されておらず、国会議員の質問主意書に答える形で一部公開された資料によれば、国家賠償法1条1項に関する訴訟で、国の完全勝訴率はおよそ98%です。
このケースは国家賠償法第2条1項に基づくものなので、一概には言えませんが、これと同じような傾向であることは推測できます。
また、国家賠償訴訟等の形骸化については「絶望の裁判所」の著者で、元最高裁事務総局判事の瀬木比呂志氏も指摘するところです。
国家賠償訴訟は民主国家としての体裁を保つためのアイテム!
上告詐欺! 国家賠償詐欺!
国家ぐるみの訴訟詐欺は2本立て!!
「絶望の裁判所」 あれもこれも 私のケースとまったく同じ!!
当初は、「『ひるおび』が、国家賠償訴訟の実態を伝えずに、安易にこのような放送をすることは、“国家賠償詐欺”の更なる被害者を生み出すことになり、許されない。」という結論で今回の記事を締めくくろうと考えていたのですが、ブログで紹介するにあたり、念のために番組で引用されていた大阪高裁1980年7月25日判決を調べてみたところ、更なる衝撃を受けました

この番組では、大阪高裁1980年7月25日判決を参照して、「修理費用がもらえる」という解説になっているので、当然のことながら、この判例は、極めて良心的な裁判官によって、行政側の瑕疵が認められた稀なケースであったのかと思っていたのですが、調べてみると、この判例は、「アスフアルト簡易舗装した府道の端に舗装が剥離して生じたくぼみがあつたことが道路管理の瑕疵にあたらないとされた事例」、つまり原告(控訴人)敗訴の判決で、この番組の解説とは正反対の結論でした。
大阪高裁1980年7月25日判決から、道路の瑕疵を判示していいる部分です。
http://xn--eckucmux0ukc1497a84e.com/koutou/1980/07/25/40616
「国家賠償法二条一項にいう道路の管理の瑕疵とは、道路がその用途に応じ通常備えるべき安全性を欠いている状態をいうのであるか、常に道路を完全無欠の状態にしておかなければ管理に瑕疵かあるというわけのものではなく、その整備すべき程度は、当該道路の位置、環境、交通状況等に応し一般の通行に支障を及ぼさない程度で足りるのてあって、通行者の方て通常の注意をすれば容易に危険の発生を回避しうる程度の軽微な欠陥は同条項にいう道路の管理の瑕疵に該当しないものと解するのか相当である。」

どのような意図で、このような企画をしたのかはわかりませんが、視聴者をバカにしているとしか思えません。



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