砂川最高裁判決が出されるまでの背景の追及が不可欠
安倍首相は、砂川判決がどのようものであるのかをまったく理解していないようですが、問題だらけの砂川判決を根拠に安保法案の合憲性を主張することは、安保法案反対派と最高裁の不正に苦しめられてきた者たちにとっては、願ってもないチャンスなのです。
その砂川事件の最高裁判決、何が問題なのかを一つひとつ検証して見たいと思います。
まずは、砂川判決がどういうものだったのか、簡単におさらいします。
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判決は、日本の安全保障条約については、「統治行為論」を前面に押し出して、「安全保障条約が違憲であるかどうかの判断は、純司法的機能を使命とする司法裁判所の審査には、原則としてなじまない性質のものである」として「司法審査権の範囲外」としたが、米軍駐留については、「違憲無効であることが一見極めて明白であることは、とうてい認められない」として15人の裁判官全員が一致して合憲の判決だった。
その論拠としたのは、憲法第9条第2項が禁止する「戦力」の中には、日本政府に指揮権、管理権のない外国軍隊は含まないというものであった。
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〈第1の問題点〉 外相や最高裁長官の公正さを欠いた行為。
マッカーサー駐日大使(連合国軍総司令官の甥)が、一審の伊達判決の翌日、当時の藤山愛一郎外相と密かに会い、最高裁に跳躍上告を勧めたこと、4月22日には、田中耕太郎最高裁長官と密談し、最高裁の審理見通しなどについて情報交換していたことが明らかになった。
裁判官が評議の内容を外部に漏らすことは、厳しく禁じられている。しかし、最高裁長官である裁判長が、最高裁内部の評議の内容を、事件の当事者である駐日大使に明かしていたのでは、裁判の公正さが損なわれる。
砂川判決を持ち出すことの愚かさ
〈第2の問題点〉 砂川判決の後に、田中最高裁長官に“ご褒美”が与えられている。
田中耕太郎は、1960年8月19日、最高裁を退くにあたってワシントンの国務省を訪問、パーソンズ国務次官補を訪ね、「自分の長年の裁判官としての経験を役立てたい」と国際司法裁判所判事立候補を表明した。パーソンズは「田中の立候補にあらゆる考慮を払う」と応じ、1060年11月16日、田中は国際司法裁判所判事に当選した。
以上は、下記の本より
〈第3の問題点〉 砂川判決自体が、違憲判決である。
このことについては、法律にお詳しい T_Ohtaguro 様から、コメントをいただいていますので、ご紹介します。
問題となるのが、砂川判決の次の部分です。
「安保条約の如き、主権国としてのわが国の存立の基礎に重大な関係を持つ高度の政治性を有するものが、違憲であるか否の法的判断は、純司法的機能を使命とする司法裁判所の審査に原則としてなじまない性質のものであり、それが一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外にあると解するを相当とする。 」
この問題を考える際にポイントとなるのが、次のことです。
【主権国としてのわが国の存立の基礎〔主権が国民に存すること〕】
【政治〔国政、国務に関する行為〕性】
関連する法律が、次の条文です。
生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする〔憲法 第十三条 後段〕。
この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない〔憲法 第九十八条1項〕。
【違憲であるか否か〔憲法に適合するかしないか〕の法的判断〔決定〕】
最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である〔憲法 第八十一条〕。
【小活】
「政治」は憲法 第十三条に掲げる「国政」に該当し、第九十八条1項に掲げる「国務に関する行為」に該当する。
「主権国としてのわが国の存立の基礎」は「主権が国民に存すること」であり、国民の権利については、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする〔憲法 第十三条 後段〕。
【結論】
安保条約を締結する行為が憲法 第九十八条1項に掲げる「国務に関する行為」に該当し、憲法 第八十一条による違憲審査の対象に該当すると解するのが妥当でしょう。
つまり、安全保障条約が違憲であるかどうかを判断していない砂川判決は、これ自体が違憲であるということになります。
このように多くの問題点が含まれている砂川判決を根拠に、安保法制の合憲性を主張することは、重大な誤りなのです。
砂川判決は、旧日米安保条約の合憲性が問われたもので、「日本の集団的自衛権が問われた判決ではない」という意見は憲法学者も認める常識的なことですが、最大の問題点は、砂川事件の最高裁判決が出されるまでの背景にあります。
最高裁や田中耕太郎最高裁長官へのアメリカ側からの周到な働きかけのもとに、砂川最高裁判決が下されたということに注目する必要があります。
野党が、安保法案の違憲性を追及するのであれば、この点も含めて追及すべきで、最高裁が主権国家としての威信も尊厳もなく安易に米国の言いなりになる中立性を欠く司法機関であるということを国会の場で明らかにすべきです。
田中角栄氏の暗黒裁判や、不正な国家賠償訴訟に象徴されるように、最高裁は、これまでも政権と協調して、不正判決に加担してきました。
田中角栄氏の「暗黒裁判」
国家ぐるみの訴訟詐欺は2本立て!!

ですから、その前に、過去の最高裁の判断について妥当であったのかどうか、適法な手続きのもとに行われた裁判であったかを十分に検証しておく必要があります。
そのためにも、砂川最高裁判決が出されるまでの背景の追及は、不可欠な要素なのです。



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