裁判所は法外な鑑定費用を認めた根拠について 説明する必要があります
建築関係の裁判では、特に専門知識を必要とするケースが多いようで、大阪地方裁判所第10民事部(建築・調停部)のホームページには、次のような文書が掲載されています。
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http://www.courts.go.jp/osaka/saiban/kentiku/02_04_kantei/index.html より
第2 建築関係訴訟
4. 建築関係訴訟と鑑定
鑑定は,訴訟手続において,専門家に知識や意見を報告してもらう証拠調手続です。専門的な(複雑かつ高度の)知見を要する建築関係訴訟においては,従来から,鑑定が利用されています。なお,鑑定には相応の費用がかかります。
鑑定の手続は,次のようになります。
当事者が鑑定の申立てをし,鑑定によって専門的な知見を得る必要性が認められたときは,裁判所が鑑定を採用します。鑑定人は,裁判所が指定します。指定された鑑定人には,鑑定に先立ち,宣誓をしてもらいます。
裁判所や当事者で協議する期日には,鑑定人も同席して,鑑定事項(鑑定する内容)を細かく決めたり,鑑定に必要な準備を打ち合わせます。
そして,鑑定実施後,その結果が鑑定書として,裁判所に提出されます。
鑑定書が提出された後でも,当事者は,鑑定書に対する疑問点や確認したい点があれば,書面で尋ねることができます。
これに対して鑑定人は,書面や口頭で回答したり,法廷での尋問の中で明らかにすることになります。
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この文書を読む限りは、実にていねいなステップを踏んで鑑定が行われることになっているようですが、実際にそのように行われているのかは、かなり疑わしいです。
村雨さんによれば、建前だけは形を整えているように思うが、特に二審の判決は、原告敗訴の結論ありきから文章が組み立てられていると考察でき、審議の過程が片寄っていたということです。
上記のホームページには、「鑑定書が提出された後でも,当事者は,鑑定書に対する疑問点や確認したい点があれば,書面で尋ねることができます。これに対して鑑定人は,書面や口頭で回答したり,法廷での尋問の中で明らかにすることになります。」と記されていますが、前回お伝えしたとおり、村雨さんは、鑑定書の矛盾点、不正個所を、証拠を示して指摘しており、それを準備書面の草案に盛り込んだということですが、弁護士は、鑑定の問題点を指摘した箇所を全て削除して、補修等の抜けている箇所を指摘するのみに終始した書面を作成したそうで、鑑定に対する疑問点・問題点の指摘は、闇に葬られています。
裁判所も弁護士も、鑑定書に対する問題点の指摘を、異常なまでに避けているように感じます。
下手に指摘をして、専門用語でまくし立てられたら太刀打ちできないなんて思っているのでしょうか?
さらに、鑑定費用に関する法律に関しても、疑問を感じるところがあります。
「民事訴訟費用等に関する法律」に、次のような規程があります。
(調査の嘱託をした場合の報酬の支給等)
第20条1項 民事訴訟等に関する法令の規定により調査を嘱託し、報告を求め、又は鑑定若しくは専門的な知識経験に基づく意見の陳述を嘱託したときは、請求により、報酬及び必要な費用を支給する。
条文の最後に、「報酬及び必要な費用を支給する。」とあり、「支給」という言葉が使われていますが、これが引っ掛かります。
類義語例会辞典には、次のように書かれています。
「交付」「給付」「支給」・・・(共通する意味) 国、地方公共団体、会社などが金や品物を渡すこと。
つまり、「支給する」のは裁判所で、裁判所から鑑定費用が渡されると受けとめられます。
裁判所が、あらゆる分野の事件を受け入れている以上、裁判官の知識・能力を補うための鑑定については、その費用を裁判所が負担するのが筋だと考えると、当然の規程であると考えられます。
ところが、同じ「民事訴訟費用等に関する法律」の第11条1項には、つぎのような規定があります。
(納付義務)
第11条 次に掲げる金額は、費用として、当事者等が納めるものとする。
一 裁判所が証拠調べ、書類の送達その他の民事訴訟等における手続上の行為をするため必要な次章に定める給付その他の給付に相当する金額
※ 次章に、(調査の嘱託をした場合の報酬の支給等)として鑑定費用が含まれています。
実際には、当事者が支払った鑑定料が、裁判所を経由して鑑定人に渡されるわけですから、裁判所が鑑定料を負担しているかのような「支給」という表現には著しい違和感を感じます。
さらに、民事訴訟費用等に関する法律には、つぎのような規定があります。
(鑑定料の額等)
第26条 第18条第2項又は第20条第1項若しくは第2項の規定により支給すべき鑑定料、通訳料、報酬及び費用の額は、裁判所が相当と認めるところによる。
村雨さんは、鑑定人からの請求金額については、裁判所が何をもって妥当と判断したのか疑問に感じるとおっしゃっています。
裁判所が必要と認めた鑑定でありながら、信頼に値しない鑑定書であったため、二審判決では、この鑑定書に一切触れていないということで、この鑑定が必要であったかは、甚だ疑問です。




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