刑事告訴

例の不起訴処分理由告知書 本末転倒の判例が根拠ですって!!

当ブログへのアクセスは、法律関係のキーワード検索にようアクセスが多いのですが、その中でも「不起訴処分告知書」「不起訴処分通知書」「不起訴裁定」・・・・、とにかく不起訴関連のキーワード検索によるアクセスが群を抜いています。
「不起訴処分」がとりわけクローズアップされなければならないのは、国家権力が関与する犯罪の場合です。
「不起訴処分」が法律に則って正しく判断されているかどうかで、その国が法治国家であるかどうかの指標になると言っても過言ではありません。


残念ながら、日本は法治国家にはなりきれていません。
一般の人が犯した犯罪は、ささいな事件であっても法律に基づいて逮捕・起訴されるのに対して、司法や行政などの国家権力が関与する犯罪は、重大な事件であるにも関わらず、検察の恣意的な判断で不起訴処分にされ、事件自体が握りつぶされているからです。
明らかに刑法等の条文に該当する事件であり、しかも証拠もそろっていながら、なぜ不起訴処分にするのか、告訴人・告発人は、とにかくその理由を知る必要があるのです。


刑事訴訟法261条では、「検察官は、告訴、告発又は請求のあつた事件について公訴を提起しない処分をした場合において、告訴人、告発人又は請求人の請求があるときは、速やかに告訴人、告発人又は請求人にその理由を告げなければならない。」と規定されています。
ところが、事件事務規定(法務省訓令)第73条2項によれば「検察官が刑訴第261条の規定により告訴人,告発人又は請求人に対して書面で不起訴処分の理由を告知する場合には,不起訴処分理由告知書(様式第114号)による。」と規定されており、不起訴処分理由告知書なる書面には「嫌疑なし」「嫌疑不十分」などの不起訴裁定の主文しか書かれていません。
ここでいう「不起訴裁定の主文」というのは、事件事務規程(法務省訓令)第72条2項1号から20号の区分のひとつにすぎません。

 
 「不起訴裁定の主文(結論)を記載することで、なぜ理由を説明したことになるのか?」
そこが、最大の疑問です。

いつも有益な情報を提供してくださる Ohtaguro 様が、法務省刑事局広報室に確認したところ、「不起訴処分の理由欄には,裁定主文を記載」すれば足る旨の回答を得ました。
その根拠として、名古屋高等裁判所 昭和58年8月10日 判決〔昭和58年(行コ)第1号〕を挙げています。


どんな判例なのか最高裁ホームページの判例検索で調べようとしたのですが、不起訴処分の理由記載に関する重要な判例であるにもかかわらず、掲載されていません。
そこで、Ohtaguro 様が図書館で調べて教えてくださったので、ご紹介します。


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(事件の概要)
裁判官の違法行為について刑事告訴たところ、不起訴処分にされた告訴人が、不起訴処分とした検察官と国に対して、不起訴処分の理由を知る権利の確認と、「嫌疑不十分」のみでは不起訴処分の理由として了解できず精神的苦痛を蒙ったということで損害賠償請求を求めた事件です。


私のケースと、極めて類似しています。
不起訴処分の理由告知に対する不満は、過去からの変わらぬテーマでもあったようです。
判決理由の全文は下記の「続きを読む」に掲載します。


これまで度々指摘しているように、判決書に掲載されていることは、あらかじめ決められている結論に沿うように、都合がよいことばかりがピックアップされている傾向にあるので、これが裁判のすべてとは限りませんが、おおよそのポイントはつかめます。

この判決のポイントは、次の二つです。
要約してお伝えします。


① 検察官の不起訴処分の理由告知手続は司法審査の対象となるか(消極)

これについての裁判所の判断は・・・
公訴の提起は検察官の自由裁量に委ねられており、不起訴処分に対する不服の申し立てについては、検察審査会への審査の申立、裁判所への付審判請求等の手続きがあるので、司法審査の対象とはならない。
不起訴処分に対する不服申立との関連で不起訴理由を知ることは必要だが、理由告知手続は不起訴処分の付随的手続とみられるので、基本となる不起訴処分自体の当否について司法審査の対象にならないと解される以上、付随的な理由告知に関しても司法審査の対象とすべき理由はない。


② 検察官の告知する不起訴理由の程度

これについての裁判所の判断は・・・
刑事訴訟法261条が検察官に不起訴理由を告知すべきものとしているのは、検察審査会に対する審査申立や裁判所に対する付審判の請求の要否の検討を告訴人、告発人等がしやすくするため、間接的には、検察官の裁量権の行使を適正ならしめるがためであると解されるので、制度の目的に照らせば、最小限度、不起訴処分の直接の理由、即ち、時効完成、罪とならず、嫌疑なし、嫌疑不十分、起訴猶予等の裁定主文に相当する程度の理由を告知すれば足りる。

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以上が裁判の概要ですが、この判決理由、本末転倒の判決だと思いませんか

「不起訴処分の理由告知手続が、不起訴処分の付随的手続とみられる」この部分が明らかにおかしいです。
事実関係や証拠を様々な角度から検証したうえで最終的な結論に至るのが本来の事件解決の道筋であって、結論に至るまでのプロセス(処分の理由)こそが最も重要なのです。正当な理由なくして、正しい結論はありえないのです。
ところが、理由告知手続を付随的手続と捉えること自体、裁判所が、結論を先行して決め、後からそれに合う判決理由を考え出していることの証左であり、日本の裁判所の特異性がこの判決理由に凝縮されているのです。

また、検察審査会への審査の申立や不審判請求をしやすくするために裁定主文程度の理由を告知すればよいということですが、不起訴裁定の主文が導き出された理由を知らずして、不起訴処分の適否、さらには検察審査会等への的確な審査申立など出来るはずもありません。
さらに、検察審査会や付審判請求の制度があるからといって、不起訴処分の適否の判断をそちらに任せればよいというのも、おかしな話です。
検察内部で対処すべき部分に問題があるにもかかわらず、そこをクリアしないで、ほかの機関に任せること自体、無責任なことなのです。


 処分権主義(民事訴訟法246条)のせいか、あるいは、裁判所が意図的に触れなかったのかどうかはわかりませんが、この裁判では、事件事務規程(法務省訓令)の不起訴裁定の要件には、まったく触れられていません。
この程度の判例・法務省の言い訳なら、不起訴処分理由告知書の不当性を容易に証明できそうです。


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名古屋高等裁判所 昭和58年8月10日 判決〔昭和58年(行コ)第1号
事件名 不起訴処分の理由を知る権利の確認等請求控訴事件
判示事項 1、検察官の不起訴処分の理由告知手続は司法審査の対象となるか(消極)
     2、検察官の告知する不起訴理由の程度
裁判要旨 1、検察官の不起訴処分自体の当否は、司法審査の対象とならないので、右処分の付随的手続たる不起訴処分の理由告知も司法審査対象となり得ない。
     2、検察官の不起訴理由の告知は、処分の直接の理由、すなわち、裁定主文に相当する程度の理由を告知すれば足りる。
     
参照条文 刑事訴訟法第261条 
     行政訴訟通則第1条 
     裁判所法第3条
掲載文献 訟務月報 第30巻第3号508頁
裁判官  山田義光 井上孝一 喜多村治雄


主文 一、本件控訴はいずれも棄却する。
   二、控訴人の被控訴人吉野荘英に対すると当審新請求としての損害賠償請求を棄却し、その余の新請求をいずれも却下する。
   三、控訴費用は控訴人の負担とする。

事実〈略〉

理由
第一 不起訴処分の理由を知る権利の確認請求について

一 控訴人は、昭和55年8月15日神戸地方裁判所豊岡支部裁判官を公務員職権濫用の被疑事実で告訴したところ、昭和57年4月22日付で被控訴人吉野より、右告訴にかかる被疑事件について不起訴処分にした旨、及びその理由は嫌疑不十分である旨を記載した通知書の送付を受けた。しかし、「嫌疑不十分」では簡単すぎて不起訴理由を了解することができない。告訴人としては、(A)嫌疑不十分とする理由、その依ってきたる原因、筋道を知る権利があり、(B)さらに「嫌疑不十分」の告知を受けた後でも、嫌疑不十分とする原因の詳細、捜査過程の告知と確認を得ることが許される権利が保障されている。しかるに、被控訴人吉野は、控訴人に右(A)(B)の権利のあることを争うのでそれら権利が存在することの確認を求めるというものである。

二 よって判断するに、刑事訴訟法261条によると、検察官は、告訴、告発又は請求人の請求があるときは、速やかにその理由を告げなければならない旨規定されている。
ところで、同法247条によると、公訴は検察官がこれを行う旨定められ、同法248条では、公訴を提起するか否かは、検察官の自由裁量に委ねる旨を明らかにしている。そして、検察審査会法30条によると、検察官の控訴を提起しない処分に不服があるときは、検察審査会にその処分の当否の審査申立をすることができるとされており、また刑事訴訟法262条に掲げる罪については、地方裁判所に対し付審判の請求をすることもできるのであって、右検察官の権限、検察審査会の構成と権限、付審判請求の手続、構造等制度の趣旨に照らせば、不起訴処分についての不服申立は、現行法上他の国家機関の専権事項とされ、或いは特別の司法救済手続によらしめているのであるから、司法審査の対象とはならないというべきである、従って、検察官のなした不起訴処分の当否の審査を直接の目的として民事訴訟ないし行政訴訟を提起することは許されていない(最判昭27,12,24民集6,11,1214頁)。
そして、【判示事項一】不起訴理由を知ることは、不起訴処分に対する不服申立との関連で必要なことであるから、請求があればこれを告知すべきものとしたのであって、右理由告知手続は不起訴処分の付随的手続とみられるのである。従って、基本となる不起訴処分自体の当否については、前記の如く司法審査の対象にならないと解される以上、同付随的手続たる理由告知に関し独立に不服申立を許し、司法審査の対象とすべき理由はないと解するのが相当である。

三 すると、控訴人の被控訴人吉野に対する本件不起訴処分の理由を知る権利の確認請求は、司法審査の対象とならない事項に関する請求というべく、国家機関としての検察官、又は検察官の地位にある個人、或いは自然人としての個人の何れとしても、不適法な訴といわざるを得ない。

第二 損害賠償請求について

一 控訴人は、検察官から「嫌疑不十分」というだけの不起訴処分告知の理由告知により精神的苦痛を蒙った、よって慰謝料として35万円の支払いを求めるという。

二 よって判断するに、控訴人の昭和55年8月15日付告訴について、検察官吉野荘英が昭和57年4月22日付で不起訴処分をなしたこと、そして不起訴処分理由書には理由として「嫌疑不十分」とのみ記載されていることは、控訴人と被控訴人国との間で争いがない。
ところで、【判示事項二】刑事訴訟法261条が検察官に不起訴理由を告知すべきものとしているのは、告訴人、告発人又は請求人が、検察審査会に対する審査の申立又は裁判所に対する付審判の請求の要否を検討することを容易ならしめるとともに、間接的に、検察官の裁量権の行使を適正ならしめるがためであると解されるところ、制度の目的に照らせば、最小限度、不起訴処分の直接の理由、即ち、時効完成、罪とならず、嫌疑なし、嫌疑不十分、起訴猶予等の裁定主文に相当する程度の理由を告知すれば足りると解するのが相当である。
控訴人は、嫌疑不十分とする理由、その依ってきたる原因、すじみちを告知すべきである、更には捜査過程まで説明すべきであるというが、嫌疑不十分の理由を詳細に告知しないからといって、それが違法であるということはできないから、控訴人の被控訴人国に対する損害賠償請求は理由がない。

三 控訴人は、更に津地方検察庁検察官検事としての被控訴人吉野に対して損害賠償を請求するが、公務員たる検事の違法な行為による損害賠償については、国家賠償法によるべく、同法の規定の趣旨並びに法意、国家の賠償能力等を考慮すると、公権力の行使に当る公務員の職務行為に基づく損害については、国又は公共団体が賠償の責に任ずべきものであり、職務の執行に当った公務員は、行政機関としての地位においてはもとより、公務員個人又は自然人個人としても賠償の責を負うものではないと解するのが相当である。従って、公務員たる検事の職務行為に基づく損害について、公務員個人、又は自然人個人としての被控訴人吉野に対して賠償を求める訴は、その請求原因に照らし被告適格を有しない者に対する訴というべく、不適法な訴といわねばならない。
控訴人はまた、本件について民法709条の責任がある旨主張するが、控訴人主張の事実関係のもとでは、被控訴人吉野の本件行為を、職務を離れた私人の行為とみることもできず、先に被控訴人国に対する請求について判断したと同様本件理由告知の方法、程度をもって、何ら違法とはいえない。従って、被控訴人吉野に対する民法上の損害賠償を求める当審新請求は理由がない。

第三 控訴人は、別紙(一)の如く、控訴の趣旨として、原判決の取消と原審で申立てた請求の趣旨と同旨の判決を求めるとするほか、原審裁判官及び当審裁判官に対し、別紙(一)記載の各事項についての明示ないしは確認を求めているが、控訴人が原審及び控訴審裁判官に対し、原審の判断又は原判決の字句の解釈について、明示又は確認を求め、これを控訴審における控訴の趣旨として申し立てることは、制度上認められていないからこれらの請求は不適法であり、却下すべきものである。

第四 以上によると、控訴人の国家機関或いは個人としての被控訴人吉野に対する不起訴訴分の理由を知る権利の確認を求める訴並びに損害賠償を求める訴をいずれも却下し、被控訴人国に対する損害賠償を棄却した原判決は相当であるから本件控訴を棄却し、被控訴人吉野に対する民法上の損害賠償を求める当審新請求を理由なきものとして棄却し、その余の当審における新請求を不適法として却下することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法95条、89条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官  山田義光 井上孝一 喜多村治雄)

別紙(一)ないし(三)〈略〉


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