三位一体の改革 税源移譲の正体
前回に引き続き、ノンフィクション・ノベル 「ほら、ピーちゃんが飛んでいる」(電子書籍) の中から、小泉政権下で行われた三位一体の改革のひとつである税源移譲による不正課税の問題をご紹介します。
今回は、年間課税所得700万円を超える者に行われた一時的な不当減税と、「国から地方への税源移譲」という謳い文句とはとは裏腹な、巧妙に仕組まれた「地方から国への税金の吸い上げ」のカラクリについてお伝えします。
前回もお伝えした18年の税率改正は、平成15年6月の「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」の閣議決定に基づいて平成19年1月から実施されたものです。
税率改正は、国から地方公共団体への3兆円規模の本格的な税源移譲を実施することを目的としたもので、住民税と所得税の役割分担の見直しを実施し、具体的には、住民税については、応益性や偏在度の縮小という観点から税率を10%にフラット化するということなのです。
地方税を、5%10%13%の三段階から一律10%にした、このフラット化が、今回のポイントになります。
前回お伝えした二重課税が課せられていた課税所得195万円以下の者に対しては、住民税(住民税所得割)が5%→10%に増税になります。課税所得200万円を超え700万円以下の者については、税率改正前も後も10%で変化はありません。
今回問題となるのは、住民税が3%減税となる課税所得700万円を超える者です。課税所得の額によって、それぞれ33%→30%、43%→40%、50%→47%に減額されます。
課税税率の変化を比較するため、二重課税が課せられた年間所得195万円以下と、不当減税となった年間所得700万円を超え900万円以下の二つのケースを 「ほら、ピーちゃんが飛んでいる」 の資料から抜粋してみました。
(年間所得195万円以下の課税税率変化)
所得年 平成17年 平成18年 平成19年
所得税 10% 10% 5%
住民税 5% 10% 10%
課税率計 15% 20% 15%
(年間所得700万円を超え900万円以下の課税税率変化)
所得年 平成17年 18年 19年
所得税 20% 20% 23%
住民税 13% 10% 10%
課税率計 33% 30% 33%
ご覧のとおり、平成18年に、年間所得195万円以下の課税率が一時的に増税になっているのに対し、年間所得700万円を超え900万円以下では一時的に減税になっています。
この理由は、所得税はその年の所得から算出され、住民税は前年の所得に基づいて算出されていて、所得税と住民税の課税時期がずれているにもかかわらず、一律に平成19年に所得税と住民税の両方の税率変更が行われたからです。(詳しくは 「裁判所の存在価値を疑う二重課税の判決!」 )
つまり、低所得者は平成18年の所得で税金の二重取りをされている一方で、高額所得者は不当な減税になっているのです。
問題は、これだけではありません。
上記の表を見て、「5%が増税され、3%が減税されたのだから、結果として住民税が増え、地方の税金が増えたんじゃないの。」と単純に考えてしまった人は、財務省のトリックにまんまと引っかかってしまった人です。
「ほら、ピーちゃんが飛んでいる」 の中の数値をそのまま利用させていただくと、195万円の5%は9万7500円ですが、700万円の3%は21万円になります。それぞれの所得層の割合を考慮しても、その差額は700万円を超える層の3%のほうが、はるかに大きいはずです。
課税所得700万円を超える層の不当な減税のために、、平成18年度は1兆5千億円の所得税の歳入減になっいるということです。
所得税と住民税の総額という観点では、平成18年の所得だけが二重課税と不当な減税の差額で1兆5千億円の所得税の歳入減となりますが、住民税に着目すれば、低所得者の5%増税と高額所得者の3%減税は、新たな税率改正が行われない限り、永遠に続くのです。
その結果、「3兆円規模の国から地方への税源移譲」といっていながら、実は2兆円以上の税金(平成18年は最低課税所得者への5%増税があるので、1兆5千億円で済んだ)を、今も地方から国に吸い上げているのです。
二重課税と不当な減税が行われた根拠について、有村とおる氏は著書の中で、次のように推理しています。
「それにしても大きな謎が未解決だった。なぜ、財務省と自民党は、危ない橋を渡ってまで二重課税を実行したのか。3兆円の所得贈与税を地方に給付するためなら理解できる話だった。しかし、実際には1兆5千億円の税金を失っていた。二重課税は財務省のミスなのだろうか。それはありえない。わざわざ定率減税の廃止といっしょにして二重課税を見え難くしたくらいだから、周到に計画された仕事にちがいなかった。国の観点で見れば得るところはなく、大きな損失を出した仕事だった。公の視点をまったく欠いた仕事だった。
国会議員は4000万円近くの年収がある。国家公務員は課長補佐以上なら年収700万円は堅い。国家公務員の局長クラスは2000万円以上だ。ともに3%の減税で、国会議員は120万円、公務員は20万円~60万円の税金のかからない金を手に入れられる。現金目当ての私利私欲だったのか。まさか・・・・。」
この続きは、電子書籍 「ほら、ピーちゃんが飛んでいる」 をご覧ください。
どう考えても、これが小泉政権での三位一体改革の税源移譲の正体だったのではないでしょうか。
ほら、ピーちゃんが飛んでいる ~文鳥、二重課税、行政訴訟~
App Store 販売中。iPad、iPhone に対応。
305ページ 600円。
ブックカテゴリーで「ピーちゃん」を検索してください。
(http://www.maroon.dti.ne.jp/littlebird/)
著者 有村とおる氏の紹介
千葉県出身。
2004年「暗黒の城(ダークキャッスル)」で第5回小松左京賞を受賞。
角川春樹事務所より出版
2011年「ほら、ピーちゃんが飛んでいる」を App Store で電子出版
日本SF作家クラブ会員、日本推理作家協会会員
(http://www.maroon.dti.ne.jp/littlebird/)



今回は、年間課税所得700万円を超える者に行われた一時的な不当減税と、「国から地方への税源移譲」という謳い文句とはとは裏腹な、巧妙に仕組まれた「地方から国への税金の吸い上げ」のカラクリについてお伝えします。
前回もお伝えした18年の税率改正は、平成15年6月の「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」の閣議決定に基づいて平成19年1月から実施されたものです。
税率改正は、国から地方公共団体への3兆円規模の本格的な税源移譲を実施することを目的としたもので、住民税と所得税の役割分担の見直しを実施し、具体的には、住民税については、応益性や偏在度の縮小という観点から税率を10%にフラット化するということなのです。
地方税を、5%10%13%の三段階から一律10%にした、このフラット化が、今回のポイントになります。
前回お伝えした二重課税が課せられていた課税所得195万円以下の者に対しては、住民税(住民税所得割)が5%→10%に増税になります。課税所得200万円を超え700万円以下の者については、税率改正前も後も10%で変化はありません。
今回問題となるのは、住民税が3%減税となる課税所得700万円を超える者です。課税所得の額によって、それぞれ33%→30%、43%→40%、50%→47%に減額されます。
課税税率の変化を比較するため、二重課税が課せられた年間所得195万円以下と、不当減税となった年間所得700万円を超え900万円以下の二つのケースを 「ほら、ピーちゃんが飛んでいる」 の資料から抜粋してみました。
(年間所得195万円以下の課税税率変化)
所得年 平成17年 平成18年 平成19年
所得税 10% 10% 5%
住民税 5% 10% 10%
課税率計 15% 20% 15%
(年間所得700万円を超え900万円以下の課税税率変化)
所得年 平成17年 18年 19年
所得税 20% 20% 23%
住民税 13% 10% 10%
課税率計 33% 30% 33%
ご覧のとおり、平成18年に、年間所得195万円以下の課税率が一時的に増税になっているのに対し、年間所得700万円を超え900万円以下では一時的に減税になっています。
この理由は、所得税はその年の所得から算出され、住民税は前年の所得に基づいて算出されていて、所得税と住民税の課税時期がずれているにもかかわらず、一律に平成19年に所得税と住民税の両方の税率変更が行われたからです。(詳しくは 「裁判所の存在価値を疑う二重課税の判決!」 )
つまり、低所得者は平成18年の所得で税金の二重取りをされている一方で、高額所得者は不当な減税になっているのです。
問題は、これだけではありません。

「ほら、ピーちゃんが飛んでいる」 の中の数値をそのまま利用させていただくと、195万円の5%は9万7500円ですが、700万円の3%は21万円になります。それぞれの所得層の割合を考慮しても、その差額は700万円を超える層の3%のほうが、はるかに大きいはずです。


その結果、「3兆円規模の国から地方への税源移譲」といっていながら、実は2兆円以上の税金(平成18年は最低課税所得者への5%増税があるので、1兆5千億円で済んだ)を、今も地方から国に吸い上げているのです。
二重課税と不当な減税が行われた根拠について、有村とおる氏は著書の中で、次のように推理しています。

国会議員は4000万円近くの年収がある。国家公務員は課長補佐以上なら年収700万円は堅い。国家公務員の局長クラスは2000万円以上だ。ともに3%の減税で、国会議員は120万円、公務員は20万円~60万円の税金のかからない金を手に入れられる。現金目当ての私利私欲だったのか。まさか・・・・。」

この続きは、電子書籍 「ほら、ピーちゃんが飛んでいる」 をご覧ください。

ほら、ピーちゃんが飛んでいる ~文鳥、二重課税、行政訴訟~
App Store 販売中。iPad、iPhone に対応。
305ページ 600円。
ブックカテゴリーで「ピーちゃん」を検索してください。
(http://www.maroon.dti.ne.jp/littlebird/)
著者 有村とおる氏の紹介
千葉県出身。
2004年「暗黒の城(ダークキャッスル)」で第5回小松左京賞を受賞。
角川春樹事務所より出版
2011年「ほら、ピーちゃんが飛んでいる」を App Store で電子出版
日本SF作家クラブ会員、日本推理作家協会会員
(http://www.maroon.dti.ne.jp/littlebird/)



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