原発事故の賠償に備え 国家賠償制度の見直しと改正を
それだけ原発事故による被害の深刻さが窺えます。
被害の程度に差はあっても、福島県とその近隣の地域に居住している人びとは、原発事故により、誰でもが何らかの経済的損失と精神的な苦痛を受けています。
その損害を引き起こした責任は、安全性を十分に検証することなく国策で原発を推進してきた国と、安全性より経済性を優先して十分な耐震性と津波に対する対策を怠ってきた東京電力にあります。
また、事故後も、原子炉の状態や放射性物質の拡散についてのデータを隠蔽し、被害を過小に伝えることで、住民への適切な避難指示を怠り、多くの住民を被曝させたり、さらには、対策が後手後手に回ったことで農業や畜産、漁業などへの被害を拡大させた政府と東京電力の責任は重大です。
国や東京電力が、損害を被った住民や事業者に対して、適切で十分な補償を行う態勢を整えることが出来ないのであれば、将来、被害者から多くの損害賠償請求訴訟を起こされることは必至です。
原子力損害賠償法による損害賠償責任は、原子力事業者が負うことになっており、国に対する損害賠償請求は国家賠償制度を利用することになります。
ところが、この国家賠償制度にかなり問題があります。
私の国家賠償訴訟においては、国の機関である裁判所と国の被告代理人を務める法務省双方の不正により、意図的に原告敗訴となるよう仕組まれていました。
また、国家賠償訴訟における国の完全勝訴率はおよそ98%であることから、私のケースに限らず、他の多くの国家賠償訴訟においても、同様に行政・法務省・裁判所が一体となった国家ぐるみの不正が行われている可能性が高く、その制度自体に疑念を抱かざるを得ません。(詳しくは「国家賠償訴訟は民主国家としての体裁を保つためのアイテム!」)
まずは、これまでの国家賠償訴訟の実態を調査・公表し、裁判所や法務局による不正の有無や、制度として十分に機能していたのかどうかを徹底的に検証する必要があります。
その上で、仮に、国家賠償制度が機能しているとしても、それだけでは不十分です。
原発事故による広範囲にわたる莫大な被害額と、今後、数年から数十年に及んで発症するであろう健康上の被害を考慮すると、国家賠償法を改正する必要があります。
そのひとつが、賠償責任の問題です。
これまでの判例にならうと、国が国家賠償法1条1項の責任を負うとした場合には、その責任主体は国であって、公務員個人に対して損害賠償請求をすることができないとしており、これに沿って処理される可能性があります。(詳しくは 「公務員に都合がよいように作成・適用されている国家賠償法 (一審・3)」)
国が損害賠償の一部をを負担するということになれば、その財源は国民の税金ということになり、最終的には国民が負担することになります
しかしながら、今回の原発事故は、被害が広範囲に及んでおり、巨額の賠償費用が必要になります。
これを税金から支払っていたのでは財政が破綻しかねません。
ですから、少しでも税金からの支出を抑えるためにも、原発の危険性についての十分な検証を行わず安易に原発を日本に導入・推進してきた政治家や官僚をはじめ、役立たずの組織であった原子力安全保安院、国立大を中心とする御用学者、適正な対処を怠り被害を拡大させた現政府・・・・、過去に遡って、それら関係者個人の責任を明確にし、その個人に対し損害賠償を負担させるように法律に改正すべきです。
さらに問題となるのが、国家賠償請求の時効ともいうべき、損害賠償を請求できる期間です。
国家賠償法には規定がないため、「損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。」という民法第724条不法行為の規定が適用され、被曝による晩発性の発症時期を考慮すると20年を過ぎて発症した場合には、請求を拒否される可能性すらあります。
現に、今年1月のB型肝炎訴訟の札幌地裁の和解案では、慢性肝炎患者への和解金は1250万円でしたが、同じ病状でも発症から20年以上経った患者に対しては、国は損害賠償請求権がなくなったとして、一律の救済を拒み、150万~300万円を国が支払うとした4月の追加和解案を患者は受け入れることになりました。




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