原発事故の責任 検察や裁判所にも・・・
ところが、3月11日の震災以降は、ずっと原発事故のことをお伝えしており、ブログの趣旨から外れているのではないかと思われるかもしれませんが、そんなことは、まったくありません。
今回の原発事故にしても、この国の中枢に巣くう組織的・構造的な病巣から起こるべくして起こったといえ、国家権力のかかわる不可解な事件・事故の大部分は、ほとんどが同じような構図で発生しています。
根底では、ほとんどが繋がっているのです。
比較的安定しているといわれていた福島第一原発1号機で、メルトダウンが起きていたことが、つい先日判明しました。制御不可能な危険と背中合わせで、しかも、ひとたび事故が起これば、周辺環境に取り返しのつかない深刻な影響を与える原子力発電所が、なぜ、国策として地震多発地帯である日本に数多く建設されたのでしょうか。
原発が推進された一連の流れに目を向けると、あまりにも多くの要因・人物が関係していて、どこに責任があるのか本質が見えづらくなってしまいます。
そこで今回は、その一部分に着目して検証してみます。
それが、以前にもお伝えした佐藤栄佐久 前福島県知事の事件です。
プルサーマルを実施しないことを明言し、国や東京電力と闘ってきた前知事が、原子力行政に立ち向かっていたさなかの、2006年10月、木戸ダム建設工事に絡んで、ゼネコンの水谷建設から賄賂を受け取ったという収賄罪で逮捕・起訴されました。
前々回の記事でも簡単にお伝えしていますが、まずは、おさらいします。
前知事の実弟が経営するスーツ会社の土地を、水谷建設が相場より約7000万円高い約8億7000万円で購入したのですが、この差額の約7000万円を、特捜部は、木戸ダムを前田建設工業、水谷建設で受注する際の「賄賂」と見立てたもので、前知事の罪は、実弟の要請を受け入れ、県に対して「天の声」を発したというものです。
ところが、この裁判の行方は、実に奇妙な展開となっていきます。

( 「知事抹殺 つくられた福島県汚職事件」より)
1999年ごろ、実弟は、スーツ会社の土地開発を、元前田建設社長に依頼していたが、うまくゆかず、会社の経営も苦しくなってきたので、前田建設会社から4億円の融資を受けた。
同社から更なる融資の同意は得られず、元前田建設社長から依頼を受けた水谷建設が8億7000万円で土地を購入した。
1億円の資金が足りなかったので、実弟の依頼で、さらに1億円が追加された。
土地売却後すぐに、4億円は、前田建設に返却された。

水谷建設が、スーツ会社すべての敷地を買い取り、ショッピングセンターが建設された後は、良好な賃貸収入が得られた。
前知事を巡る事件や脱税の摘発を受けて、水谷建設はこの土地を手放したが、購入価格を上回る9憶6000万円で売却することができた。

さらに、12億円以上でファンドに転売された。
転売されるたびに、より高額な価格で取り引きされていることに注目してください。
検察は、この土地を5億円~7億9000万円と住宅地として計算し、その差額を賄賂とているが、利用価値がある商業地は住宅地より高い値段が設定できるそうです。
つまり、差額の7000万円が賄賂とは認められない状況だったのです。
検察は、時価との差額1億7000万円が賄賂だとして起訴したが、一審は、7000万円を賄賂とし懲役3年執行猶予5年とした。
二審に至っては、土地取り引きの際の時価との差額を賄賂だとする検察側の主張は退けたものの、前知事らが得たのは「換金の利益」という無形の賄賂だとして、一審・東京地裁判決を破棄し、改めて懲役2年執行猶予4年の判決を言い渡した。(つまり賄賂額ゼロ)
賄賂として認定される金額がゼロにもかかわらず有罪というのは、不思議な判決です。
しかも、資本主義社会の正当な取り引きそのものを否定するような判決です。
なぜ、裁判所がそこまで異常な判断をして、前知事を有罪としなければならなかったのかというと、プルサーマル発電を福島第一原発で実施させるためだったのではないかと推測されるのです。
それを想定していたかのように、前知事のあとに就任した佐藤雄平 現知事は、昨年8月、福島第一原発3号機でのプルサーマルの受け入れを表明し、昨年9月にプルサーマル発電を開始しました。
ところが、今回の震災で、その3号機が爆発し、より深刻で重大な被害を周辺環境に及ぼしました。(詳しくは 「プルサーマル3号機の爆発は 即発臨界だった!!?」)
危険性を伴うプルサーマル発電が、十分な検証・検討されることなく国策として強引に進められ、さらには、捜査機関や司法組織を加担させてまで、なぜ実施されなければならなかったのか、その背景を徹底的に調べ、追及する必要があります。
検察の不十分で歪んだ捜査と裁判所の偏った判断のもとに、県民により選ばれた知事が失脚させられたということは、国家権力により県民の民意が踏みにじられたことになります。
その挙句に、プルサーマル3号機の爆発があり、福島県を中心とする広範囲の地域の人々や様々な産業、環境に甚大な被害をもたらしたのです。
捜査機関が、前知事に対する不当な逮捕・起訴により、福島の県政に及ぼした責任は重大です。誰の指示でそのような不当な捜査がおこなわれたのか、当時の政権や捜査機関・司法組織を含む関係者個人の責任についてもしっかり追及し、それらに対しても賠償を求めるべきです。(原発事故の責任については 「原発事故の責任」でも詳しくお伝えしています。)
前知事の逮捕が、プルサーマル実施のために行われたのではないかと私が確信するのは、国家賠償訴訟での体験と、それを巡る刑事事件での実態から、行政・裁判所・検察・法務局などの癒着による不正の実態に気がついたことが背景にあります。

この震災を、真の民主国家再生のチャンスと捉え、根本から国家を構築し直さなければなりません。



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