不起訴処分の理由の矛盾
不起訴処分の理由というのが、「郵政は、固定IPアドレスを利用しており、特定したIPアドレスが郵政のIPアドレスではない。」ということなのです。
たった、これだけの理由にために、なぜ4ヶ月もかかったのかは不思議なのですが、苦し紛れの末の理由であることは、この理由の矛盾が物語っています。

「固定IPアドレス」とはその名の通り,プロバイダからいつも同じ番号が割り当てられるIPアドレスのことで、オプションで申し込まなければなりません。
これに対し、接続するたびに、動的にプロバイダーから違うIPアドレスが割り当てられるのが一般的です。(ここでは、「動的IPアドレス」と表現することにします。)
通常のIPアドレスが固定でないのは、IPアドレスの数に限りがあるためです。プロバイダはIPアドレスの割り当てを流動的にし、契約者数より少ない数のIPアドレスを使い回します。
( http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20060403/234376/ から引用)
ブログコピペ事件では、ウィキペディアの編集履歴から、犯人のIPアドレスが
「 61.124.75.176 」、ホスト名変換が
「 ntmygi059176.mygi.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp 」であることがわかりました。(詳細は 「この告訴状 どこに提出しようかな・・・」 )

さらに、プロバイダーである富士通から連絡がいったIPアドレスの割り当て先の組織というのも、常に正確に一致することになります。
よって、固定IPアドレスであるからこそ、IPアドレス「 61.124.75.176 」が郵政のパソコンであることがより正当化され、H副検事の説明は不起訴処分の理由にはならないのです。
このとこを、もうちょっと詳しく論証してみます。
※ 論理的なことが苦手な方は、読み飛ばしていただいてけっこうです。
① H副検事の説明から、郵政が固定IPアドレスを利用している。
② 前回詳しくお伝えしたとおり、ウィキペディアの編集が行われたIPアドレス
「 61.124.75.176 」は郵政のパソコンである。(①より固定IPアドレス)
このことを前提に、前述の固定IPアドレスの定義に基づくならば、次のような命題(文章)成り立ちます。
A 固定IPアドレスであるならば、IPアドレスは常に「 61.124.75.176 」である。
B IPアドレスが常に「 61.124.75.176 」であるならば、固定IPアドレスである。
このAとBの双方が成り立つことになり、「固定IPアドレスであること」と「IPアドレスが常に『 61.124.75.176 』であること」は、それぞれ必要十分条件となります。
不起訴処分の理由である「郵政は、固定IPアドレスを利用しており、特定したIPアドレスが郵政のIPアドレスではない。」ということを、上記のような命題に置き換えてみると次のようになります。
C 固定IPアドレスであるから、IPアドレスは「 61.124.75.176 」ではない。
このCの命題が、真(正しい・成立する)か偽(正しくない・成立しない)を見分ける方法に、「対偶」という数学的概念があります。
「AはBである」ということが正しければ(これを「正」という)、「BでなければAでない」(これを「対偶」という)ということが成立します。
わかりやすい例を挙げると、「パンダは動物である」という命題が正しければ、「動物でなければ、パンダでない」ということも正しいということになります。
これを前述のABの命題に当てはめてみます。
Aの対偶:IPアドレスが「 61.124.75.176 」でなければ、固定IPアドレスでない。
Bの対偶:固定IPアドレスでなければ、IPアドレスが「 61.124.75.176 」でない。
つまり、「固定IPアドレスであるのなら、IPアドレスが常に『 61.124.75.176 』でなければならず」「IPアドレスが「 61.124.75.176 」でない」と主張すのであれば、動的IPアドレスでなければならないことになります。

「命題」の真偽、「必要条件」「十分条件」「対偶」については、小室直樹氏の 「数学嫌いな人のための数学(数学原論)」 に詳しく書かれていますので、興味のある方は読んでみてください。
ちなみに、理屈の通らないことを無理やり押し通す司法と違って、論理に矛盾がない数学、私は大好きです。
この本の中で、法律学のことについて興味深い記述がありましたので、ご紹介します。

論理を守ることを建前とする法律学でさえ、かくのごとしである。そのためかどうか、この観点から見ると、法律学は急速に進歩しているとはいえない。』




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