最近になってよく見かけるテレビCMで、「これって政府の印象操作じゃないの!?」と不快な気分にさせてくれるのが経済産業省の30秒ほどの次のCMです。
既にご覧になっている方も多いと思います。
YouTubeにもアップされています。https://www.youtube.com/watch?v=3Xk8Kjfxx84
福島第一原発から排出されるアルプス処理水は安全で海に流しても問題ないという印象を国民に植え付けることが目的だと思われます。
アルプス処理水は、原子炉内に溶け落ちた核燃料の冷却で出た高濃度汚染水を多核種除去装置(ALPS)で少なくとも2回除染したものですが、トリチウムは除去できずに残存しているため、基本的には微弱なベータ線を発するトリチウムを含むだけの状態にしたものとされています。ところがトリチウムの安全性については専門家でも意見が分かれるところです。
トリチウムは水素の同位体で半減期は12.32年で、ベータ崩壊する際の放出するエネルギーは小さく、最大で18.6keVで、セシウム 137 の最大値512keVの30分の1程度です。
そうであっても安全とは言えません。
水素と同じ挙動をとるトリチウムが有機化合物中の水素と置き換わり、食物を通して人体を構成する物質と置き換わったときには体内に長くとどまり、近くの細胞に影響を与えます。
さらに、DNAを構成する水素と置き換わった場合には被ばくの影響がより強くなり、トリチウムがβ崩壊してヘリウムに壊変したときにDNAの二重らせん構造を維持する水素結合力が失われ、その構造が脆弱になり、最終的にはDNA構造を破壊して遺伝情報に影響を与えることなどが指摘されています。https://trial17.blog.fc2.com/blog-entry-666.htmlhttps://news.yahoo.co.jp/articles/76f4c3b017b53e83ace97ac13246e1eceb06bc5d?page=3トリチウムは自然界にも存在し、これまでも世界各国の原発から放出されているので問題はないという見方もありますが、詭弁としか言いようがありません。
通常の制御されている原発では、燃料棒は被膜に覆われ、冷却水が直接、燃料棒に触れることはありません。そこからの排水ですから多くの核種の放射性物質が含まれることはありません。
しかし、福島第1原発の場合は、水素爆破とプルサーマル3号機の核爆発によって、燃料棒が溶け落ちデブリとなった放射性物質がむき出しの状態を冷却した水と、原子炉建屋とタービン建屋内に流入した地下水が混ざり合うことで発生した汚染水を、ALPSで処理したものですから、それとは大きく異なります。
東京電力が2020年12月24日に公表した資料によると、処理水を二次処理してもトリチウム以外に12の核種を除去できないことがわかっています。二次処理後も残る核種には、半減期が長いものも多く、ヨウ素129は約1570万年、セシウム135は約230万年、炭素14は約5700年などです。https://trial17.blog.fc2.com/blog-entry-668.htmlそのことを隠蔽するかのような東京電力の不誠実な対応には驚くばかりです。
東京電力がデタラメな線量計を使って、処理水の安全性を強調する宣伝を2020年7月から福島第一原発の視察者の約1300団体・1万5000人のに見せていたことが、東京新聞の取材で分かりました。
ベータ線を放出するトリチウムを含む処理水入りのビンに、ガンマ線のみを検出する線量計を当てて反応のない様子を示したり、セシウムについても高濃度でないと反応しない線量計を使って処理水の安全性を強調する宣伝を繰り返していたといいますから、かなり悪質です。
安全性に問題がない処理水であるならば、このようなことをする必要はないはずです。
専門家からは「処理水の海洋放出に向けた印象操作と言われても仕方ない」と批判が出ています。https://www.tokyo-np.co.jp/article/206024増え続ける処理水タンクと費用ですが、結局のところ政府と東京電力は、安易で安価な海洋放出という手段を選択をしようとしているのだと思います。
それにしても科学的根拠の疑わしいCMを繰り返し流すとは、経産省の見識とモラルが問われます。
テレビCMには数百万、数千万円以上の費用がかかっているはずです。
印象操作のための怪しげなCMに国民の税金を使うよりは、トリチウムの分離法の開発にでも使うのが筋ではないでしょうか。
こんなことばかりしているから政府はまったくもって信用されないのです。