またもや法の下の不平等、まやかしの法治国家を象徴するような検察の恣意的な判断が行われました。
2019年7月の参議院議員選挙広島選挙区で、河井克行氏から買収されたとする広島県内の地方議員や後援会員ら100人について、東京地検は全員を不起訴処分にしました。買収された100人のうち40人は首長や議員で、大半が30~50万円を受け取り、中には150万円、200万円を受領した者もいます。渡された現金を返金したケースや議員や首長を辞職したケースもありますが、政治家30人は今も辞職していません。
様々なケースがあるにもかかわらず、全員を一律に不起訴処分にしたことは、到底、理解されるはずがありません。公職選挙法は非買収者も罪に問われることを規定しており、買収した側の河井克行氏は、妻の河井案里氏を当選させる目的で100人に計2871万円を渡したとして、先月、懲役3年の実刑判決を言い渡され、現在、控訴中です。
過去には、数万円の被買収でも略式起訴で罰金刑にしており、今回の検察の判断は、明らかに異常なケースといえます。
検察は、全員不起訴処分の理由として、いずれも受動的な立場で悪質性が低く、起訴は必要ないと判断したということですが、これは、単なる表面的な理由に過ぎません。河井夫妻による大規模買収事件については、当ブログでも何度か取り挙げています。
この時の選挙は、表向きは、自民党が2議席の独占を狙って案里氏を擁立したということになっていますが、実際のところは自民党本部からの案里氏側への肩入れが尋常ではなく、同じ自民党の溝手顕正氏へ振り込まれた金額の10倍の1億5000万円が河井氏に振り込まれています。なぜこんなことになってしまったのか、理由は2つあったと考えられます。
河井案里の対立候補だった溝手顕正氏は岸田派の最高顧問であり、安倍首相に批判的だったようです。幼稚な攻撃性むき出しの安倍氏が、溝手氏を落選させ岸田氏にダメージを与えれば自分の地位も安泰で一石二鳥ぐらいに思っていたのか、安倍前首相の私憤が背景にあったともいわれています。もうひとつは、溝手氏と河井氏の戦いは、“ポスト安倍”候補の岸田政務調査会長(当時)と、菅官房長官(当時)の「代理戦争」とする見方もありました。
選挙期間中、党本部から安倍首相(当時)をはじめ菅官房長官(当時)、二階幹事長、河野外務大臣(当時)など党の幹部や閣僚が連日、案里氏の応援に広島を訪れました。特に、菅氏は公示前を含め、あわせて3回、河井氏の応援に駆けつける力の入れようだったといいます。
結局のところ、広島選挙区の選挙結果は、圧勝が予想されていた自民党のベテラン溝手顕正氏が落選し、同じ自民党から立候補した新人の河井案里氏が当選しました。
さらに、安倍氏の後任として菅氏が首相に選出されましたし、案里氏の擁立・当選は、安倍氏ばかりでなく、菅氏にとっても大きなメリットになりました。“仁義なき戦い” 敗者は誰か前に新聞で読んだ記憶がありますが、克行氏から現金を手渡されるとき、「安倍さんから」と言われた議員もいたということですので、誰の指示で、党本部から1億5000万円が振り込まれたのかが推測できます。1億5000万円が振り込まれた背景と使途については徹底的に解明されなければならない検察が起訴して公の場での裁判となれば、資金の出所など、党本部あるいは安倍氏の関与など不都合な真実が白日のもとに晒されることになります。
政権の意向を汲んだ検察が、そうなることを最も警戒して全員不起訴処分にしたと考えられます。
とにかく、公になって困る事件は不当に不起訴処分にするか、告訴状、告発状を受理しないことで事件潰しをするのが検察の常套手段です。こんな記事もあります。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー夫妻の公判では弁護側が、夫妻の立件に有利な供述を得る見返りに、被買収罪を不問とする「違法な司法取引」があったと主張した。
実際のところ、複数の地方議員によると、検察官から捜査段階の聴取時に「先生には政治家を続けてもらいたい」「悪いようにはしない」と言われたという。
(7月7日付 中国新聞より)ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー自民党が、すべての罪を河井夫妻に押しつけることで、事件の早期の終息を図ろうとしたとも受け取れます。
今回の検察の判断は、三権癒着のまやかしの法治国家を体現するかのような歴史に残る大失態といえます。